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父子DNA訴訟、「公の秩序」守る妥当な判決

 最高裁はDNA型鑑定で血縁がないことが証明された場合でも法律上の父子関係を認めるべきだとの判決を下した。これは血縁の有無よりも「嫡出推定」を重視し、子の利益と家庭の安定を図ろうとする民法の趣旨に沿った妥当な司法判断だ。

家族を保護してきた民法

 家庭は社会の最小単位で、その在り方は公の秩序に関わる。社会変化に合わせると称して性倫理を蔑(ないがし)ろにし、家族制度を歪(ゆが)めて社会秩序を脅かすようなことがあってはならない。

 訴訟は、婚姻中の妻が不倫相手との子供を出産、その後に離婚して不倫相手と再婚し、元夫に対して父子関係の取り消しを求めたものだ。

 民法では妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する「嫡出推定」によって扶養義務のある父親を法的に明確にし、子を保護してきた。今回の場合も出産時に婚姻中だった前夫が法律上の父親となっている。

 これに対して一審、二審では子が血縁のある男性に養育されていることを考慮して取り消しを認めたが、最高裁は「科学的根拠で血縁関係が明らかになく、すでに別居していても、それでも子の身分の法的安定を保つことが必要」として、あくまでも「子の安定した身分保障」を優先した。

 これは妥当な判断だ。DNA型鑑定の結果によって父親を代えることができるとすれば、子の身分が揺らぐばかりか、性倫理の乱れを容認し、社会秩序を脅かしかねない。現に不倫相手の子を出産した妻が子の戸籍を夫から外すためにDNA型鑑定を利用するケースすらあると伝えられる。

 想起すべきは、民法が親族の扶(たす)け合いを責務とし、婚姻や夫婦財産、親権などの権利と義務を明示し、家庭の安寧を図り、家族を保護してきたことだ。

 例えば、婚姻は男女の一夫一婦制に基づき、届け出によって成立する(法律婚)。夫婦は「夫又は妻の氏を称する」同姓とし、配偶者のある者が重ねて婚姻する重婚を禁止し、刑法には重婚罪を設ける。

 また「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とし、配偶者に不貞な行為があった時は離婚の訴えを提起できる守操義務を課す。子の母親は出産を通じて明らかだが、父親については「嫡出推定」をもって明確にする。

 これは民法制定時の明治期にDNA型鑑定がなかったこともあるが、それだけでなく血縁に関わりなく父子関係を明らかにし、安定した家族を築くためのものだ。さらに子供の身分を守るために再婚禁止期間を設け、離婚後300日内に生まれた子の父は前夫とする。

 このように民法は「純潔な家族」を公の秩序の基礎に据えてきた。今回の訴訟でも明らかなように、子に不利益がもたらされる原因は親の側の性の乱れである。

性倫理を蔑ろにするな

 それにもかかわらず、判決に対して一部に「家族の変化と法がずれている」として民法規定の改定を求める声があるが、これは主客転倒と言うほかない。公の秩序は性倫理から始まることを銘記しておきたい。

(7月22日付社説)

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