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北極政策 「法の支配」の確保に貢献を

 地球温暖化に伴う海氷減少によって北極圏が「より開かれた海」に変わりつつある中、新たな航路や資源をめぐって米国、ロシア、中国のつばぜり合いが激化している。

 北極圏を無秩序な覇権争いの場としないために「北極政策の推進」を掲げる日本は「法の支配」の確保に貢献しなければならない。

 評議会の閣僚級会合開催

 5月には北極圏8カ国から成る北極評議会の閣僚級会合がアイスランドの首都レイキャビクで開催され、この地域の平和と安定に向けた建設的な協力をうたった「レイキャビク宣言」に署名。会合にはブリンケン米国務長官やロシアのラブロフ外相らが出席し、日本や中国もオブザーバーとして参加した。

 北極圏は世界の他の地域より約3倍速いペースで温暖化が進行する。夏季には氷で閉ざされていた海に新たな航路が出現。この北極海航路を使えば、アジアから欧州への航行距離はスエズ運河を抜ける南回り航路の6割に短縮され、輸送コストも大幅に削減できる。

 ロシアは近年、北極圏に新たな軍事基地を建設して部隊を展開するなど、軍事活動を活発化させている。中国もシルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷上シルクロード」建設を表明。北極圏に位置する国に研究施設やインフラ設備投資を持ち掛け、北極圏進出に躍起になっている。

 中国は将来、北極海に潜水艦を展開することも狙っている可能性があるという。国際秩序を軽視しがちな中露両国が、こうした動きに出ていることには懸念が残る。

 米海軍は1月に公表した戦略文書「青い北極圏」で、中露両国に対抗するため、北極圏で出遅れた軍事プレゼンス拡大の必要性を訴えた。砕氷船の数でも53隻を保有するロシアと、現有4隻に加えて原子力砕氷船を含む2隻を開発中の中国に比べ、米国は2隻のみで大きく水をあけられているという。

 未開発の資源も注目されている。米地質調査所(USGS)によれば、北極圏には世界の未発掘の石油の13%、天然ガスの30%が埋蔵されており、鉱物や漁業資源も豊富だとされる。中国は3月採択の5カ年計画で、北極圏で天然ガスや鉱物などの資源開発を本格化させる意向を示した。

 日本はアジアで最も北極圏に近い国家だ。政府は2018年5月、今後5年間の海洋政策の指針となる「海洋基本計画」を閣議決定。この中で「北極政策の推進」を初めて主要施策として明記した。今年度から砕氷機能を持つ「北極域研究船」の建造を始め、26年度の就航を目指している。

 自由な海洋秩序を守れ

 北極には、領土権主張の凍結や平和利用などを定めた南極条約のような条約はない。北極は「海」であり、国連海洋法条約などの海洋法が適用される。

 日本は各国の競争が「航行の自由」を侵害したり軍事的な緊張や対立をもたらしたりしないよう、米国などと共に北極海で法の支配の確保に尽力し、自由で開かれた海洋秩序を守ることが求められる。

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