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大飯原発判決、ゼロリスク求め論理の飛躍

 関西電力大飯原発3、4号機の再稼働の差し止めを命じる判決を福井地裁が下した。安全性が確保されていないとして、原発の周辺住民らが、2012年11月に差し止めを求めて提訴していた。

規制委の安全審査中に

 樋口英明裁判長は「地震の揺れの想定が楽観的で、安全技術や設備は脆弱」などを判決理由に挙げた。だが、同3、4号機は定期点検のため停止し、再稼働に向け安全審査を申請して原子力規制委員会が審査を行っている最中だ。

 科学的で専門的な知識が要求される問題で、規制委の審査結果を待たずに独自の判断を下すのは、司法の思い上がりと言われても仕方がない。しかも、その論理には飛躍があり、極めて非現実的なものだ。当然のことながら、関西電力は判決を不服として控訴した。

判決は、関電が設定した基準地震動(想定される最大の揺れ)について「基準地震動を超える地震が到来しないというのは、根拠のない楽観的な見通しにすぎない」と述べた。

 原発の耐震設計の基本となる基準地震動について、関電は当初700ガルとしていたのを2度の修正で856ガルに引き上げ、ストレステストでは1260ガルの揺れでも炉心に損傷は生じなかったと主張した。

 安全審査で常に問題となる活断層の有無についても、規制委の専門家チームは大飯原発の敷地内に活断層はないとの調査結果を発表している。

 にもかかわらず判決は、「地震の発生は仮説や推測に依拠せざるを得ず、1260ガルを超える地震が大飯原発に到来する危険がある」と述べる。

 1260ガルを超える地震が「絶対に来ない」とは言えない。しかし、「言えないなら危険というのは論理の飛躍がある」(入倉孝次郎京都大名誉教授)と言わざるを得ない。

 将来起き得ることについてより精度の高い予測を求め、科学者は研鑽(けんさん)を積んできた。判決は、そのような科学的な努力と思考の放棄を意味する無謀な論理を展開している。

 裁判長はまた「地震によって複数の設備が同時に使えなくなったり、故障したりすることは当然考えられる」とし、700ガル以下の揺れでも冷却機能が失われ、重大事故が起きる可能性に言及している。

 さらに、東京電力福島第1原発事故時に半径250㌔圏内の住民への避難勧告が検討されたことから、250㌔圏内の原告166人についても人格権が侵害される危険があるとした。

 これら福井地裁の判断は、原発にゼロリスクを要求するところからきていると言える。しかし、人間が生存する上で、ゼロリスクということ自体不可能である。

上級審は理性的な判決を

 福井地裁が論理の飛躍した非現実的な判決を下す背景には、情緒的な反原発世論への迎合があるのではないか。

 国と地域の経済や雇用にマイナスの影響を与えかねないこの判決が必ずしも人格権を守るものとは思えない。上級審ではより理性的な判決が下されることを望みたい。

(5月24日付社説)

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