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米国務長官演説 日本も中国幻想から目覚めよ

 現役の米政府高官が中国の最高権力者を名指しし、ここまで激しい批判の言葉を浴びせたことが、かつてあっただろうか。

 ポンペオ米国務長官がカリフォルニア州で行った対中政策演説で、中国の習近平国家主席を「破綻した全体主義イデオロギーの信奉者だ」と非難し、「自由世界はこの新たな暴政に打ち勝たなくてはならない」と訴えたのだ。ソ連を「悪の帝国」と呼んだレーガン元大統領を彷彿(ほうふつ)させる。

共産党との共存は不可能

 米国が中国との協調を重視する「関与政策」を続けてきた過去半世紀には考えられなかった発言である。その意味で、ポンペオ演説は、米中の「新冷戦」が新たな次元に入ったことを明確に示すものだ。米中対立は貿易やテクノロジー分野が中心だったが、米ソ冷戦時代のように「自由民主主義対共産主義」という政治体制をめぐる争いが前面に出てきた。

 演説は、トランプ政権内で周到に準備されたものだった。この1カ月間に、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、レイ連邦捜査局(FBI)長官、バー司法長官が、相次いで共産党のイデオロギーや中国のスパイ活動などを非難する演説を行い、その締めくくりがポンペオ演説だ。また1972年の電撃訪中で関与政策に道を開いたニクソン元大統領の記念図書館を演説会場に選んだのも、対中政策の歴史的転換を国内外に印象付ける狙いからだ。

 米歴代政権が対中政策を誤った根源は、ソ連を「悪い共産主義」、中国を「良い共産主義」と切り分け、中国の発展を支援すれば、いずれ好ましい国に変わるという「幻想」を抱いてきたことにある。これに対し、ポンペオ氏は、中国を「マルクス・レーニン主義体制」と断じた上で「米中の根本的な政治、思想的相違はもはや無視できない」と語った。米国がようやく中国に対する幻想を捨て去り、共産主義はすべてが悪だという前提に立ったのである。

 われわれ日本人も中国幻想から目覚めなければならない。わが国は中国共産党と共存することを前提に対中政策を進めてきたが、ポンペオ氏は共産党による一党独裁体制が続く限り、中国との共存は不可能だとはっきり言い切ったのだ。

 トランプ政権は実際、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)の排除や、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖命令など、中国と関係を切り離す措置を次々に講じている。いわゆる「デカップリング」である。

対中包囲網の構築目指せ

 「民主主義国家による新たな同盟を築くべき時だ」。ポンペオ氏は、国際的な対中包囲網の形成を呼び掛けた。強大化する中国の覇権の野望を阻止できるかどうかは、ひとえに自由民主主義陣営が共産主義の脅威を正しく認識し、結束して対抗できるかに懸かっている。

 米中双方に良い顔をする「二股外交」は、もはや通用しない。日本政府はトランプ政権の呼び掛けに積極的に応じるとともに、価値観を共有する国々を対中包囲網に巻き込む努力をしていくべきである。

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