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東日本大震災9年、復興した新しい東北を世界に

 東日本大震災の発生から9年を迎えた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で政府主催の追悼式は見送られ、被災地での追悼式も縮小されるなど影響が出ている。しかし、これまでと変わらぬ追悼の思いを捧(ささ)げ、復興への決意を新たにしたい。

若い移住者の増加も

 大震災による死者、行方不明、負傷の悪化などで亡くなった震災関連死を合わせると犠牲者は2万2200人を超える。犠牲者の冥福を祈るとともに、大切な人や家を失った被災者の9年間の歩みにも思いを致したい。

 避難者は東京電力福島第1原発事故を中心に4万8000人(2月10日現在)を数えるが、復興の歩みは着実に続けられてきた。被災者向け災害公営住宅は2万9000戸が建設され、ほぼ全戸が完成した。

 津波で甚大な被害を受けた沿岸部では、新しい街並みが整備され、防潮堤や道路の建設などが進んでいる。産業の回復もかなりのところまできた。

 ここまでの復興に注がれた努力に敬意を表するとともに、また課題も直視したい。一つはハード面の復興が進む一方、人口の減少や高齢化などが克服されていない。これは東北の被災地に限ったことではないが、復興に新しい日本の地方モデルを期待する声があったことを考えると、この希望は捨てたくない。

 宮城県気仙沼市の唐桑地区など復興ボランティアでやってきた若者が住み着くなど若い移住者が増えたところもある。若いエネルギーと発想に期待したい。来年は大震災から10年となるが、課題克服と新たな東北の姿が見えるようにしたい。

 大震災直後、心にも大きな傷を負った被災者と日本国民が示した絆を思い起こしたい。新型コロナウイルスとの戦いも、当時の日本人の見せた思いやりと団結で克服できるはずだ。プレート型の巨大地震の恐ろしさを知らされた大震災の教訓を生かし、南海トラフ地震への備えもさらに進めるべきだ。

 新型コロナウイルスへの対応では憲法の緊急事態条項の問題が改めて浮上してきているが、この問題が提起されたのも東日本大震災であった。政府は危機対応能力の強化と法的な整備に取り組む必要がある。

 多くの住民が避難生活を強いられた福島では、唯一全町避難が続いていた双葉町の一部地域の避難指示が解除された。14日には不通区間だったJR東日本の常磐線富岡―浪江間の運行が再開する。

 しかし、避難解除地域への住民の帰還は進んでいない。浪江町5・7%、飯舘村21・6%、楢葉町49・1%などに留まっている。福島第1原発の廃炉作業では、汚染水を浄化した処理水が問題になっている。薄めて海洋放出するとしても、風評被害が拡大しないような丁寧な説明が必要だ。農水産物の宝庫である福島産の風評被害に、国を挙げての取り組みが求められる。

被災地巡る聖火リレー

 東京五輪・パラリンピックは復興五輪と位置付けられ、聖火リレーは今月26日、楢葉町をスタートして避難指示が出た地域を巡る。新型コロナウイルス問題を克服し、復興する福島から日本の底力を世界に示したい。

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