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ロシア憲法改正案 懸念される領土拡張の正当化

 ロシアのプーチン大統領が1月に憲法改正を提案し、各界の著名人や有識者から選抜した委員から成る改憲作業部会の審議の中で「領土割譲禁止」や「第2次世界大戦の戦勝国の役割」の明記などが検討されている。旧ソ連による北方領土不法占拠、ウクライナのクリミア自治共和国併合など領土拡張の正当化が懸念される。

「割譲禁止」の提案も

 プーチン氏による改憲の提案そのものは統治機構の変革だ。首相候補承認や閣僚任命権の一部を大統領から下院に委譲し、連続2期の大統領任期を「通算2期」にし、地方知事らで構成する大統領諮問機関「国家評議会」を「内政や外交の基本方針を決める」政治機構として書き加える。

 2024年に大統領任期を迎えるプーチン氏が、引き続き権力維持を図るためとロシアのメディアでは指摘されている。改憲提案と同時にメドベージェフ首相を退陣させ知名度の低いミシュスチン連邦税務局長官を首相にし、後継が誰か見当がつかない政治状況になった。

 プーチン氏はメドベージェフ氏に08~12年に大統領職を任せた「双頭の鷲(わし)」方式で権力を維持し、大統領任期を4年から6年にして大統領復帰を果たした。しかし、支持率の低下から同方式を再び用いれば次の大統領職に権力が移ると警戒したとみられる。

 昨年12月に既にプーチン氏は大統領任期「連続2期」を「2期」にする改憲に言及しており、大統領職が自身のように長期間にわたって強権を掌握することを防ぐ狙いもあろう。プーチン氏の改憲案について下院は第1読会で全会一致で支持しており、今後の審議でも上下両院で支持されるとみられる。

 一方、改憲作業部会にプーチン氏は、スポーツマン、芸能人、政治家、科学者、文化人など75人の委員を任命する大統領令を発して、多様な意見を取り入れる形を作った。ここで元首を「大統領」から「最高指導者」に改める提案もある。

 また、同作業部会のハブリエワ共同議長は、憲法前文への第2次世界大戦戦勝国の役割明記を検討していることを表明し、 また俳優のマシコフ氏が提案した「ロシア領の割譲禁止」を盛り込むことについてプーチン氏は「考え自体は気に入った」と賛意を示し、専門家に検討させる意向を示している。

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は昨年、独ソ不可侵条約が第2次世界大戦に直結したという「欧州の未来に重要な記憶」を採決しており、特にソ連の衛星国にされた東欧諸国は「戦勝国」ソ連に否定的だ。また、このところロシアは北方領土に対しても「第2次世界大戦の結果」として主権を主張している。

 冷戦終結当時を原点に

 「戦勝国」の明記によりソ連時代の軍事覇権を評価しかねない憲法前文では、冷戦時代の東西対立を彷彿(ほうふつ)とさせよう。1993年制定のロシア憲法は、ソ連時代を教訓とする民主派によって民主主義や市場経済が導入され、自由主義体制での経済成長を目指していた。冷戦終結当時を原点としてほしい。

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