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米イラン緊張、両国は報復の連鎖を絶て

 イランの精鋭、コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害で、米国とイランの間の緊張が高まっている。再び中東を戦場としないため双方の自制が必要だ。

 米軍基地にミサイル

 コッズ部隊は、対外工作や情報収集に当たってきたとされ、兵力は1万人前後。ソレイマニ司令官は民兵組織を動員し、イラク戦争後のイラクや内戦下のシリアでの基盤造成で実績を挙げてきた。カリスマ性が強く、イラン国民から英雄とたたえられてきた司令官の死に、イラン国内で反米での結束が強まるのは避けられない。

 米政府は司令官殺害について米国人の殺害を計画していたためと説明するが、状況を見る限り説得力に乏しい。ポンペオ国務長官も以前からソレイマニ司令官の殺害を主張しており、条件がそろったところで実行に移したということだろう。「強い大統領」をアピールし、再選につなげたいトランプ大統領にとって絶好の機会でもあった。

 イランは報復としてイラク国内の米軍基地2カ所にミサイル十数発を撃ち込んだ。イランのザリフ外相はツイッターで「自衛のための相応の措置を取り、完了した」と表明。「事態の悪化は望まないが、攻撃に対しては自衛措置を取る」と米国の出方を見守る姿勢を示した。

 トランプ氏は攻撃に対して「問題ない」と述べており、反撃はしない意向。しかし、イラン国内の反発は強く、シリア、イラク、イエメンのイラン系民兵組織の動きも懸念材料だ。

 気になるのは、イラクの対応だ。司令官殺害がイラク領内で行われたことに議会が強く反発。米軍の撤収を求める決議を採択し、政府も決議に沿った対応を取る意向だ。だが、トランプ氏は「基地の整備に莫大な資金を投入してきた」と撤収を拒否している。

 イラク戦争後、イラクに駐留していた米軍は、2011年に全戦闘部隊を撤収させた。イラク政府の強い撤収要求を受けた措置だ。その後、過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭。IS掃討のため14年に米軍が駐留を開始し、現在は国内に5200人が駐留している。

 イラクのISは支配地を失い、ほぼ壊滅状態だが、国内に勢力を温存している。復活の可能性は十分にあり、撤収で得をするのはISだ。

 また、反米強硬姿勢を強めるイランが自衛策の一つとして核兵器保有へと進み始める可能性も捨て切れない。すでに今後は、核合意を順守しないことを表明した。トランプ氏が振りかざす経済制裁では、核保有を止めることは無理だろう。

 独自外交で緊張緩和を

 菅義偉官房長官は「全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求める」と、事態の鎮静化を働き掛けていくことを表明した。

 日本が輸入する原油の8割以上がホルムズ海峡を通過する。イラン有事となれば、日本経済への直撃は避けられない。一方の米国は今や純原油輸出国で、影響は限定的だ。日本としては同盟国米国との連携を強めながら、イランとのパイプを生かし、日本独自の外交を通じて緊張緩和に取り組むことが必要だ。

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