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国連と中国 影響力拡大に対する警戒を

 国連は、加盟国数が193カ国に上る世界最大の国際機関である。

 その国連で中国の影響力が拡大している。強権政治を正当化するために国連を利用する中国への警戒が求められる。

ウイグル問題で脅しも

 昨年8月、中国農業農村省の次官を務めていた屈冬玉氏が国連食糧農業機関(FAO)の第9代事務局長に就任し、15ある国連専門機関のうち、四つの組織のトップの座を中国人が占めた。国連分担金も、2019年から21年の通常予算の分担率で中国が約12%となって8%台の日本を抜き、22%の米国に次いで2番目となった。

 国連での影響力を高める中国は近年、国連の政策を中国が優先する事項やイデオロギーに有利となるように転換しようとしている。国際人権団体の報告書によると、中国の当局者は、中国に批判的なNGOが国連経済社会理事会の協議資格を取得できないように妨害するなどの圧力を加えた。

 また国連の規則に違反して、各国の人権状況を監視する国連の専門家に嫌がらせや脅迫などを行ったという。自国の人権問題への批判を抑えるためだろうが、身勝手な振る舞いである。

 中国が100万人以上のウイグル族を強制収容所に拘束していることに対し、国連では昨年10月、人権侵害を非難する英国の声明に22カ国が署名した。中国は反発し、オーストリアには署名すれば北京で希望していた土地を入手できなくなると伝えるなど脅しや報復に出た。卑劣で許し難いことだ。

 人権軽視を示す事例は、ほかにもある。昨年11月、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)の事務局長にエジプトのガーダー・ワーリー社会連帯相が任命されたが、有力な対抗馬だったのが14年に香港民主派による大規模デモ「雨傘運動」を取り締まった中国の曽偉雄元香港警務局長だ。曽氏は当時、強硬な姿勢を示し、平和的に行われたデモに催涙ガスを投入することも躊躇(ちゅうちょ)しなかった。

 中国が影響力を拡大する背景には、トランプ政権下で米国が国連への関与を減らしていることもある。

 だが世界最大の国際機関で共産党一党独裁体制の中国が勢力を強めていることを、米国としても看過することはできないはずだ。国連でも米国をはじめとする民主国家が主導権を握ることが望ましい。

 国連はシリア問題などで、安全保障理事会の常任理事国であるロシアや中国が拒否権を発動し、機能不全に陥った。こうした事態を防ぎ、中国を牽制(けんせい)するには、常任理事国拡大などの安保理改革も不可欠だ。日本はドイツ、インド、ブラジルなどと連携し、粘り強く取り組んでいく必要がある。

旧敵国条項の削除実現を

 国連憲章には、第2次世界大戦で連合国の敵だった日本やドイツ、イタリアなどに対する自由な武力行使を認めた旧敵国条項(53条、107条)がある。

 沖縄県・尖閣諸島問題などで日本と対立する中国が、この条項を利用しないという保証はない。日本は削除実現に向けた働き掛けを強めるべきだ。

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