日印2プラス2、地域の安定へ連携強化を
インドの首都ニューデリーで、日印間で初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が実施された。日印両国は、域内で法の支配の浸透などを目指す「自由で開かれたインド太平洋」構想を米国と共有している。
南シナ海やインド洋への進出を強める中国を牽制(けんせい)し、地域を安定させるために連携を強化すべきだ。
戦闘機訓練の実施で一致
両国は、自衛隊とインド軍が食料や弾薬を相互に融通し合うための物品役務相互提供協定(ACSA)の早期締結や、日本で戦闘機訓練を共同実施することなどで一致した。
ACSAは、今月中旬にも見込まれる安倍晋三首相の訪印時の締結を目指している。また、自衛隊が共同で戦闘機訓練を行うのは、同盟国の米国、「準同盟国」と位置付ける英国、オーストラリアに続き4カ国目で、信頼醸成や技術向上を図ることを狙っている。
インドの人口は2030年までに14億5000万人に達し、世界1位になる見通しだ。「世界最大の民主主義国」のインドと防衛協力拡大で一致した意義は大きい。
2プラス2の開催は、日本にとっては7カ国目で、インドにとっては米国に続いて2カ国目となる。背景には、インド太平洋地域で存在感を増し続ける中国への警戒感がある。
河野太郎防衛相は「インド太平洋を自由で開かれたものにするという構想の中で、日印と米国、豪州が緊密に連携していくことが非常に大切」と強調。茂木敏充外相は、シーレーン(海上交通路)の要衝に位置するスリランカでの日印の港湾整備を例に、第三国で「協力を深めていこうと一致することができたのは大きな成果」と述べた。
中国はシルクロード経済圏構想「一帯一路」でスリランカの港湾建設事業に高金利で融資。返済不能になるや99年間にわたる運営権を得た。こうした手法は国際社会から「債務のわな」と批判を浴びている。日印は質の高いインフラ整備などで、地域の発展に貢献する必要がある。
一方、今回採択した共同声明は、インド太平洋構想について他国を排除しない「包摂的」との言葉を盛り込んだ。インドには、中国を警戒しつつ、経済的なつながりから中国を強く刺激することも避けたい思惑がある。これに配慮した文言であり、対中関係改善を目指す日本としても都合のいい面があろう。
しかしインド太平洋地域で中国の影響力が強まれば、将来的にはインドの国益が損なわれ、地域の不安定化を招くことにもなりかねない。日本も中国との無条件の関係改善を求めるようでは、香港問題や新疆ウイグル自治区での中国の人権弾圧を軽視していると国際社会に受け取られよう。
民主国家との関係強めよ
インドのモディ政権は、パキスタンとの係争地であるジャム・カシミール州を政府の直轄領とした。テロ対策の側面があるとしても、国内のヒンズー教徒とイスラム教徒との対立をあおるような手法には問題がある。宗教対立の解消や民主主義国との関係強化に努めることが求められる。
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