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インド土地争い、懸念される宗教対立の激化

 インド最高裁は、多数派ヒンズー教徒と少数派イスラム教徒の対立の一因となってきた北部アヨディヤの宗教施設の土地をめぐる訴訟で、イスラム教徒に代わりの土地を与えるように命じ、ヒンズー教徒側勝訴の判決を言い渡した。イスラム教徒の反発は必至の情勢で、宗教対立の激化が懸念される。

 ヒンズー教徒側が勝訴

 問題の土地はヒンズー教のラーマ神の生誕地とされる。16世紀に当時のムガール帝国の下で建てられたモスク(イスラム礼拝所)が、1992年にヒンズー過激派に破壊されたことをきっかけにインド各地で暴動が起き、約2000人が死亡した。

 最高裁は判決で「(92年の)モスクの破壊は違法だ」と批判。一方、土地の所有権はヒンズー教徒側にあると認定し、土地は政府が新たに寺院を建てるための信託機関に譲渡されると判断した。

 ヒンズー至上主義を掲げるモディ首相は2014年の総選挙で、聖地とされるこの土地にヒンズー教寺院を建設すると公約していた。モディ氏はツイッターへの投稿で判決を評価する一方で「平和的共存を目指すインド人固有」の姿勢を示し、平静を保つよう国民に呼び掛けた。ヒンズー、イスラム両教徒には自制が求められよう。

 ただモディ氏はこのところ、イスラム教徒への強硬姿勢を鮮明にしている。インド北部のパキスタンとの係争地、ジャム・カシミール州は先月末、州からインド政府の直轄領となった。モディ政権が8月、国内で唯一イスラム教徒が多数派の同州の自治権剥奪を決定したことに伴う措置だ。

 モディ氏は「テロからの解放」が目的と強調し、パキスタンが支援する過激派を排除するためだと主張してきた。一方、強硬措置でヒンズー教徒の熱狂的支持を集め、経済停滞などの不都合な事情から目をそらさせようという思惑もあるようだ。

 現地のイスラム教徒やパキスタンは反発している。カシミール地方では先月、インドとパキスタン双方の軍が停戦ラインを挟んで攻撃し、互いに死傷者が出るなど緊張が高まっている。

 政府の支配強化が進めば、住民の反政府感情をあおるだけだとの見方もある。過激派に入る住民が増え、日本人を含む160人以上が死亡した08年のムンバイ同時テロのような事件が発生する恐れも否定できない。

 このほかインド政府は8月、北東部アッサム州住民を対象に「不法移民」排除を目的とする「国民登録簿」を発表。住民約3300万人のうち主にイスラム教徒の約190万人が除外された。除外されれば、生活基盤のないバングラデシュに「送還」される可能性もある。

 モディ氏率いる右派の人民党(BJP)政権誕生後、複数の州政府は、ヒンズー教徒が神聖視する牛の肉の販売や所持を禁止する法律を施行した。イスラム教徒ら宗教的少数派に対して不寛容だと言わざるを得ない。

 融和と共存に努めよ

 イスラム教徒に強硬姿勢を示せば、結局はヒンズー教徒の安全も脅かされることになろう。モディ氏は宗教間の融和と共存に努めるべきだ。

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