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露トルコ合意、クルド人の安全に責任を

 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領がロシア南部のソチで会談し、トルコ軍のシリア北部への越境軍事作戦の原因となった米軍撤収後のクルド人勢力支配地域への対応について協議し、国境地帯からのクルド人勢力の撤退などで合意した。

 過激派組織「イスラム国」(IS)排除の徹底と紛争回避とともに、人道問題で非難を浴びたシリアの政情改善が図られるまで予断を許さない。

シリアから米軍撤収

 米国はクルド人勢力と力を合わせ、シリア北部で4年にわたる掃討戦でIS支配地域を解放する目的を果たした。だがトランプ大統領の選挙公約で撤収する米軍は、クルド人から裏切り者呼ばわりされて文字通り石もて追われた。

 米下院ではシリアからの米軍撤収に反対する決議を、与党・共和党からの造反を含む賛成354票で反対60票を圧倒して可決。クルド人勢力を見捨てることには政権関係者からも異論が続出した。

 シリアにおけるトランプ外交は米国に代価が高くつくもので、トルコ軍の越境攻撃後の制裁発動や、ペンス副大統領らのトルコ派遣は付け焼き刃の印象を拭えない。トルコを訪問したペンス氏はエルドアン氏に5日間の停戦を約束させたが、その期限となる22日のロシア・トルコ首脳会談の露払いをしたようなものだ。大統領選の争点の一つになるとみられ、共和党の結束に課題を残した。

 しかしトランプ氏は撤収を「戦略的に素晴らしい」と強調し、米兵を故郷に帰すことを優先した。また、力の空白が生まれるクルド人勢力支配地域に、予想通りトルコ軍とロシアの支援を受けるシリアのアサド政権軍が進出しても、戦闘をするか徹底的に話し合うかはトルコとシリアに任せる考えを示した。

 トランプ氏が撤収を断行したのは選挙への意識とともに、IS掃討後の米軍の駐留継続が自国のためにはならないと考えたためだろう。シリアにおいて米国や欧州連合(EU)に倣う民主主義勢力は小さく、アサド政権に代わる可能性は低いと言わざるを得ない。また、クルド人勢力が底意で期待するクルド国家樹立に米軍は付き合うことができず、むしろクルド人組織をテロ組織と見るトルコなどの疑心暗鬼を生む。

 プーチン氏とエルドアン氏は、越境したトルコ軍の29日までの停戦延長と、その間に国境のシリア側の南北約30㌔、東西400㌔の一帯からクルド人勢力を撤収させ安全地帯とし、国境地帯を共同でパトロールすることなどで合意した。ロシアにとって漁夫の利を得る展開だが、懸念されているISの復活を許さず、クルド人の安全を守ることに責任を持つべきだ。

 人道、人権問題改善を

 また、アサド政権は敵対勢力に使用した化学兵器はじめ人道上の問題で国際非難を受けているところであり、トルコもクーデター未遂事件を契機に人権弾圧が問題になっている。米軍撤収に懸念が寄せられるのもこのためだ。地域で影響力を増すシリア、ロシア、トルコに改善を促したい。

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