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カシミール問題、印パの紛争回避に手を尽くせ

 インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方のインド側、ジャム・カシミール州の自治権を撤廃したことをめぐって両国の緊張が高まっている。双方の言い分は平行線をたどっているが、宗教の違いによって繰り返されてきた紛争を回避するため、国際社会と共に手を尽くさなければならない。

 インドが自治権を剥奪

 カシミール地方は、インド、パキスタン、中国が領有権を主張している。イスラム教徒が多数を占めながら英国統治時代のマハラジャ(領主)がヒンズー教徒だったため、1947年の印パ分離独立以来、帰属をめぐって両国の争いの火種となっているほか、中印紛争の一因となってきた。

 ヒンズー教徒が多数を占めるインドで、モディ首相の与党インド人民党は5月の総選挙で、同州の自治権の根拠となる憲法370条を廃止することを公約の一つに掲げて勝利した。インドのコビンド大統領が5日に自治権剥奪の大統領令に署名して即時発効させたのは、公約を実現に移すためのものだ。

 しかし、パキスタン側のカシミール地方では激しい抗議デモが連日行われた。今後、インドが同州統治を定める憲法改正に進む過程で、新たなテロも起きかねない。インド総選挙前から印パ両国の緊張は増しており、2月にも同州でイスラム過激派が起こした自爆テロに報復するため、インドはテロ組織の拠点があるとみたパキスタン領内を空爆していた。

 このため、パキスタンのカーン首相は「インド軍によるいかなる攻撃にも対応する準備をしている」と述べる一方で、モディ首相を「ヒトラー」と非難しながら、国際社会が容認しないように求めている。

 ただ、ヒトラーがチェコスロバキアのズデーデン地方をドイツが併合することをミュンヘン会談で認めさせたのと違い、モディ首相は国内問題と訴えている。憲法改正によって同州を政府が直接統治してテロをなくすことを選挙公約にして民意を得た以上、これを実行に移すことは正当であるという考えだ。

 インドは、カシミール問題を抱える3カ国のうち中国とパキスタンが、カシミール地方を通る「中パ経済回廊」建設で連携を強めていることにも焦りがあろう。

 解決は難しいが、各国の外交努力は無駄ではない。中国の王毅外相はパキスタンに対する支援を約束。国連の安全保障理事会では48年ぶりにカシミール問題が協議され、両国の主張は平行線に終わったものの、紛争回避に向けた効果がないとは言えない。カーン首相、モディ首相はトランプ米大統領とそれぞれ電話会談し、トランプ氏は緊張緩和を促している。

 宗教の多様性尊重を

 カシミール地方はパキスタン政府にとってもイスラム過激派が暗躍し、手を焼く地域になっている。

 印パ紛争再燃こそテロリストの思うつぼだ。怒りで混乱するよりも秩序構築に努め、インド側の与党もイスラム教徒の怒りを抑えるためにも宗教の多様性の国是を尊重していく姿勢が大切だ。

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