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北の飛翔体発射、武力挑発再開は容認できない

 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は日本海に面する東部の元山付近から飛翔体を北東方向へ数発発射し、沿岸から約70~240㌔の海上に落下した。北朝鮮は2017年11月に「火星15号」と称する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射して以降、対話路線への転換で武力挑発を自制してきた。今年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂し、戦略見直しを迫られている北朝鮮が今回の発射を機に挑発を再開させるとすれば断じて容認できない。

 米国を揺さぶる狙い

 北朝鮮は発射の翌日、国営メディアを通じ金正恩朝鮮労働党委員長が日本海沿いで実施された軍部隊の火力砲撃訓練に立ち会ったと明らかにした。訓練では多連装ロケット砲や戦術誘導兵器の運用能力を点検したといい、発射場面の写真を公開した。これが前日の飛翔体発射だったとみられる。

 専門家らの分析では、飛翔体にはロシア製短距離弾道ミサイルに酷似するものも含まれるという。弾道ミサイル発射が事実であれば国連安保理決議違反であり極めて遺憾だ。

 いつもながら北朝鮮の飛翔体発射には幾つかの狙いがありそうだ。まず米国に対する揺さぶりだ。北朝鮮が核実験・弾道ミサイル発射を中止していることを自らの外交成果として宣伝しているトランプ米大統領に対し、完全非核化に応じなければ北朝鮮への制裁を解除しないという方針を転換するよう圧力をかけた形だ。

 その一方で意図的に射程を短距離にとどめることで、トランプ氏が180度態度を変えて対北強硬策に戻らないようにさせたい思惑も感じられる。

 次に制裁長期化に備えた軍の引き締めが考えられる。正恩氏としては、特に制裁の影響が出始めたと予想される軍の不満を外敵に向けさせることで体制の緩みを回避する必要があろう。

 北朝鮮の最大の理解者となって米朝と南北の融和ムードを維持しようとしてきた韓国・文在寅政権を揺さぶる狙いもあるかもしれない。開城工業団地の操業や金剛山観光の再開に向け米国に国連制裁対象からの除外を認めさせられなかった文政権に対し、武力挑発をちらつかせ再度、制裁緩和を導き出すよう尻を叩(たた)いたものだ。

 だが、北朝鮮の狙い通り米国が北朝鮮に求める「FFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)」のハードルを下げるのか不透明だ。むしろ北朝鮮が武力挑発を再開させた場合、再び国際社会による対北制裁圧力は強化され制裁緩和はさらに遠のく。

 正恩氏は4月の最高人民会議(国会に相当)で「年末まで米国の勇断を待つ」と述べ、米国に譲歩を促したが、状況が変わらなければ、北朝鮮が制裁強化を覚悟の上で長距離弾道ミサイルの発射に踏み切る恐れもある。警戒が必要だ。

 重要な迎撃能力向上

 これまで北朝鮮が発射したICBMには日本上空を通過したものもあり、日本全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」は約200発が実戦配備されているとされる。陸上配備型イージスを含めミサイル迎撃能力の向上は死活的に重要だ。

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