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大川小判決、防災対策再点検で備え強めよ

 東日本大震災の津波で犠牲となった宮城県石巻市立大川小学校の児童23人の遺族が、市と県に計23億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は学校側による防災対策上の過失を新たに認定し、市と県に計約14億3600万円の支払いを命じた。

 学校側による震災前の防災対策をめぐる過失責任を認めたもので、教育関係者は重く受け止めなければならない。

震災前の過失責任認める

 一審仙台地裁は2016年の判決で、地震発生後、津波到達を予測できたのに適切な場所に避難させなかったとして教職員の過失を認め、市などに計約14億2600万円の支払いを命じた。一方、震災前に津波の予見は不可能だったとして、学校などの防災対策上の過失は認めなかった。

 控訴審では震災前における市や学校の防災体制が主な争点となっていた。大川小は市の津波ハザードマップで津波の予想浸水域外に立地していたが、判決は校長らがハザードマップの信頼性を独自に検討することなどを怠り、市教育委員会も危機管理マニュアルの是正指導を怠ったとして、学校側や市教委の過失責任を認めた。学校が児童生徒の安全を確保する責任を重く見たと言えよう。

 大川小では児童74人が津波で犠牲となった。遺族の無念さは察するにあまりある。被災地だけでなく、全国の教育関係者が大川小の悲劇を教訓とし、学校現場の防災対策を強化する必要がある。

 判決は、校長など学校運営者は児童の行動を拘束する以上、安全確保について地域住民よりはるかに高いレベルの知識や経験を求められるとも指摘している。その通りだが、教職員の多くは防災の専門知識を持っていないことも確かだ。学校現場への行政や専門家の支援が欠かせない。

 また判決は、河川と敷地とを隔てるものが堤防しかないなどの大川小の立地条件を踏まえれば、当時の校長らは津波が堤防を越えて襲来する危険性を予見できたと判断。マニュアルに避難場所として約700㍍離れた山を指定するなどしていれば、児童らは助かったと判断した。

 近い将来に南海トラフ地震の発生も予測されている。悲劇を繰り返すことのないよう、各学校では危機管理マニュアルの再点検や見直しなどで備えを強めてほしい。

 大川小は児童の大幅な減少によって今年3月に閉校し、4月に同市立二俣小に統合された。被災した校舎は震災遺構として保存される。震災の記憶の風化を防ぐことも防災対策強化につながるだろう。

 「てんでんこ」も参考に

 震災で大きな被害を受けた三陸地方は、昔から津波が何度も生じている。「津波が来たらてんでばらばらに逃げろ」という「津波てんでんこ」の教えにも改めて注目したい。

 この教えに基づいて避難訓練を重ねていた岩手県釜石市内の小中学校では、震災が発生した際に児童生徒約3000人が即座に避難して全員が助かった。こうした事例も防災対策の参考にすべきだ。

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