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外交イニシアチブ増すウズベキスタン

帝京大学元教授 清水 学
 ミルジヨエフ大統領の初インタビューを読んで

 中央アジアのウズベキスタンでは、改革路線を進めるミルジヨエフ大統領のもと、2018年には、「マスメディア法」と「ジャーナリストの活動保護」に関する法改正が行われ言論やメディアをめぐる状況が大きく変化している。8月17日には、ミルジヨエフ大統領が初めて新聞のインタビューに応えた。同地域に詳しい帝京大学元教授、清水学氏がインタビューについて解説する。(編集部)

清水 学 元帝京大学教授

清水 学(しみず・まなぶ)
1942年生まれ。専門は中東・南アジア・中央アジアの地域研究、途上国経済発展論、比較経済体制論など。帝京大学元教授。

 ウズベキスタン共和国の独立30周年を前にして、シャヴカト・ミルジヨエフ大統領の初めてのインタビューが現地の「新しいウズベキスタン」という新聞に掲載された。記事では、同国がこれまでに達成したことや新たなウズベキスタンの構築を目的とする改革の優先課題などについて説明されている。

 ウズベキスタンの外交政策の研究者として、インタビューを興味深く読んだが、以下、外交政策に限定して感想を述べたい。

 まず第一に、印象的な政策のひとつは、中央アジア諸国の相互関係における新時代への道を開いたことである。特にタジキスタンとの関係を正常化し、改善するために大統領がとった勇気あるイニシアチブは評価される。

「新しいウズベキスタン」紙に掲載されたミルジヨエフ大統領のインタビュー

「新しいウズベキスタン」紙に掲載されたミルジヨエフ大統領のインタビュー

 独立後の中央アジア各国は隣国との間で領域、アムダリア・シルダリアなど大河の水配分や開発計画、国境を越えた水争いなど紛争要因も抱えていた。特にウズベキスタンとタジキスタンは水利問題、イスラム主義運動への対応など複雑な対立があり、両国の首都の間でも直行便もない状態が続いており、人的移動、輸送にも支障があった。ミルジヨエフ大統領は2016年就任以来、従来の関係にとらわれずに、タジキスタンとの関係改善に力を入れ、両国関係の正常化を進めた。2018年3月には自らタジキスタンの首都ドゥシャンベを訪問し、多面的な協力関係を進展させた。このイニシアチブは全体として中央アジア諸国間の関係を前向きに推し進める役割を果たしている。

 「近隣諸国との関係において長年に渡り蓄積されてきた問題は解決された。国境は開かれた」と大統領は語っている。「国境が開かれた」とは、従来、中央アジア諸国間のヒト、モノの動きの制約条件となっていた規制が大幅に緩和され、正常な国家間の関係が機能するようになってきたことを指すと思われる。今まで交流がなかったという意味ではなく、それが非常にスムーズになってきたのである。このプロセスを通じてウズベキスタンの役割が高まり、同時にこの地域の問題を解決するための同国のイニシアチブの範囲と影響力は拡大した。

 中央アジアにおける地域間協力も、地域全体の社会経済を発展させる上で非常に大きな可能性を秘めている。注目される事例のひとつは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の歴史である。そのプロセスは簡単なものではなかった。しかし、現在ASEANは、この地域のサプライチェーンのネットワークに基本的な社会経済インフラを提供するに至っている。大統領がインタビューで語った「中央アジアの精神」という言葉には、このような幅広い可能性が込められている。

ウズベキスタンの古都サマルカンドの観光名所レギスタン広場

ウズベキスタンの古都サマルカンドの観光名所レギスタン広場

 私の「中央アジア精神」の理解は、歴史的な深いつながりを基礎に現在の中央アジア諸国が、地域的あるいはグローバルな問題、社会経済発展に関して密接に協力する上での基礎になる考え方を指す。近年中央アジア諸国間の協力が具体化し始める中で改めて注目されるようになった考え方である。

 第二に、国内政策と外交政策の関係に関するもう一つの印象的な次の発言。 「これらの例を取っても、国内および外交政策が相互に関連し、調和していることを示している。重要なのは、このような内外の政策の調和は、国民利益の名の下に実現され、その結果は一般市民の生活と行く末の中で感じられるということである」

 外交政策の成果が国民生活の利益と関連付けられる点が重要であるが、中央アジアの歴史的、地理的、文化的な長い伝統を反映していると考えられる。

 第三に、諸外国の専門家の関心を引くのは、「民族友好の日」や「バタンドシュラール(海外滞在ウズベク人)財団」の発足など、国の多民族性を国内外の共存政策に相乗的に結びつけていくという政府のもうひとつの興味深い取り組みだ。

 第四に、アラル海沿岸地域改善ためのウズベキスタンのイニシアチブを評価したい。現在、環境問題は新たな植生の模索に加え、新エネルギーミックスの研究を含むエネルギー政策にも直結させて多面的に見ていく必要がある。この地域は太陽エネルギー開発の大きな可能性を秘めている。従来の炭化水素エネルギー資源の開発政策を、水素ガス製造など環境にやさしい新エネルギーに対する世界の新たな需要に適応させる方向に調和させるという、中央アジアにとって大きな挑戦を意味している。

 最後に、ウズベキスタンは中央アジアのみならず南アジアとの連結性を追求する上でますます重要な役割を担っていることが強調されている。私は7月中旬タシケントで開かれた国際会議「中央アジアと南アジア:地域の相互連携 挑戦と可能性」に参加したが、その会議で提案された中央アジア・南アジア間での相互連結が実現されていくことを願っている。中央アジアと南アジアは長い歴史的視点からして深い結びつきを持っていたにも関わらず、現在の結びつきは極めて不十分である。その中央アジア・南アジアを交通・流通・文化など多面的に再度連結させて両地域の発展を図っていこうという考え方が「相互の連結性」の強化ということである。

 現在、アフガニスタンで発生している激動は一時的な後退を引き起こす可能性がある。しかし、アフガニスタンを地域発展に組み込むという基本的な方向性は歴史的に条件づけられたものである。ミルジヨエフ大統領がインタビューで強調したように、あらゆる可能性を利用して、この地域の和平プロセス、安定、発展を探求する必要があると考える。

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