ワシントン・タイムズ・ジャパン

平昌五輪後の国際関係 トランプ外交に対抗する中露

北朝鮮化の方策を選択

 日本選手たちの華々しい活躍がわれわれの目を楽しませてくれた半面、南北融和の演出が繰り返された平昌五輪も閉幕し、いよいよ国際関係が小康状態を抜け出してきた。

 まず、アメリカのトランプ政権が打ち出した保護貿易主義の強化である。これは、米国が輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の高関税を、カナダとメキシコを除き一律に課するという宣言である。戦略的に重要な物資の自給率を高めるためという名目であるが、一見してそれがこうした業種の国内産業を保護し、雇用を拡大するための軍事ケインズ主義政策の一環であることが分かる。

 次に、中国の習近平政権が長期的な独裁体制の確立を模索し始めたことである。これは、全国人民代表大会で採択される、主席の任期を撤廃し、習氏を終身国家主席にすることが可能となる憲法の改正である。

 最後に、ロシアのプーチン大統領が、その大統領教書演説の中で核戦略の強硬姿勢を明言し、同氏の“軍事政権”としての盤石化を狙う意図が明確になったことである。

 短絡的に見れば各国が勝手に施行しているように映るこうした一連の動向には、しかしその底辺にそれぞれが短期的に国家のレジリアンス(強靭(きょうじん)性)を高める方策を模索しているという共通点が存在する。特に中国とロシアのそれはトランプ外交への対応が生み出した政策である事情が読み取れる。

 八方美人的なポリティカル・コレクトネス(公平・公正・中立で差別や偏見のない政治をめざす主義)の感覚に固執したオバマ時代の軟弱外交の下で、やりたい放題が許されるぬるま湯に慣れた各国は、この1年でトランプ大統領の本気=アメリカファーストを見せつけられた。要するに、オバマ氏は舐(な)められていたのであり、各国がこれまでのように一筋縄ではいかないことを痛感した当然の対応というわけである。

 中国やロシアのような資本主義や民主主義が未成熟な国が、アメリカのようなそれが成熟している大国に対抗するために迅速に国家的基盤を強化するには、残念ながら独裁化や軍事化を推進する政策が効果的であり、言うなれば各国が北朝鮮化する方策を選択していると言える。

 しかしながら、実のところ、海千山千の経済界で名を馳(は)せたモンスター経営者であるトランプ大統領は、こうした他国の対応などそもそも想定内であろう。むしろその状況を逆手に取り、アメリカファーストの政策を一層押し進めるに違いない。対立する中露の過激化は、米国の国益を保護するための諸政策への反対意見を封じ込めるのに好都合だからである。

安保向上と景気回復を

 むしろ問題は、この情勢変化に日本がどのように対応すべきであるかだが、政策方針の基本はすでに決している。こうした状況を利用しつつ、国益を確保することに他ならない。そこで必要なことは、まず北朝鮮や中国の軍事的に激化する動向とそれに対抗する米国との共同歩調を可能にするための安全保障能力の向上であり、次に、それを生み出すための経済力を養うための景気回復である。この二つの目的をいかに効率的かつ着実および迅速に実現できるかどうか、安倍首相および自民党政権が正念場を迎えている。

 最後に、憲法改正の論議はくれぐれも慎重を期する必要があることを指摘しておく。なぜなら、国民投票の過程や結果が正否のいずれであろうとも、一時的には国論の分裂は不可避であり、現下の国際情勢においてそうした国家的なレジリアンスの低下は日本に危機的な状況を招く恐れがあるからである。

3

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。