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新型コロナ感染拡大防止で世界が注目する台湾ー范振國処長に聞く

台北駐那覇経済文化代表処 范振國処長に聞く

 中国武漢発の新型コロナウイルス感染が世界中で猛威を振るう中、台湾は感染拡大の防止で世界の注目を集めている。南シナ海に軍事拠点を構築する中国は香港でも国家安全維持法を成立させ、民主化運動の弾圧に動いている。また、尖閣諸島周辺海域では中国公船の航行が常態化している。台北駐那覇経済文化代表処の范振國処長にコロナウイルス感染の教訓や安全保障環境について聞いた。(聞き手=沖縄支局・豊田 剛)


世界が台湾を見本とする3つのコロナウイルス対策

 ――台湾は感染者を最小限に防ぎ、世界から見本とされている。

新型コロナ感染拡大防止で世界が注目する台湾

台北駐那覇経済文化代表処 范振國処長(撮影:豊田 剛)

 コロナウイルス対策における台湾の施策は国際的な評価が高い。国内の感染者数は430人余で、死者は7人。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染症の経験がある。SARSはコロナウイルスと特徴が似ており、今回のケースでは特異なウイルスに対抗する体制が整っていた。

 二つ目はウイルス発生の情報を得てすぐに中国大陸から観光客の入域制限をした。これ以外に、感染者の隔離政策、水際対策を早くから取っていた。

 三つ目は、世界各国が医療物資不足で困っていた中、いち早くマスク生産に踏み切った。全世界のマスクのシェアの約9割が中国だったが、台湾は1カ月半という短期間で92本のマスク生産ラインを作った。結果、台湾は世界第2位のマスク生産国となった。

望まれる医療物資の自国生産、防疫品の製造を沖縄で

 ――日本の対応をどう評価するか。

 日本人の国民性は非常に高いレベルであり、世界から見ると感染拡大をうまく防いでいる。ただ、国家安全の一環として医療物資を自国生産できる体制を確立することが望ましい。

 ――沖縄との関係ではどのような教訓があるか。

 沖縄県は観光が主産業だが、観光だけに依存することは危険だ。製造業を強化するよう県に提言している。マスクや防護服など医療物資・機器の製造をしてみてはどうか。台湾は短期間でそれができた。沖縄側に関心があれば台湾企業が協力する用意はある。これは沖縄にとってビッグチャンスになるはずだ。

 ――政府は、ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国を皮切りに、台湾を含めた12カ国・地域とも入国緩和の交渉を始める方針だ。

 これについて台湾政府は理解を示している。

 これとは別に、沖縄を例外または特区として沖台間のビジネスおよび観光客の行き来を再開してほしいという要求が沖縄県内の観光協会、県庁、経済団体など各界から多く出ている。ただ、これは国家同士の権限となるため、沖縄独自で決めることはできない。

 日台がお互いに納得のできる一致した入国の仕組みを早くつくることが願われる。

一国二制度受容しない台湾、香港からの移住希望者を支援

 ――蔡英文政権が2期目を迎えた。対中関係、対日関係はどのような見通しか。

 台中関係は、平和・平等・民主・対話がキーワードになる。こうした価値観を前提に交流を再開することを希望している。すなわち、台湾は香港のような一国二制度は絶対に受け入れないということだ。

 日本とは引き続き、自由と民主の価値観で緊密な関係を築いていく。台湾に最も近い沖縄には昨年95万人が訪れた。ウイルスの要因を排除できた際は、できるだけ台湾を訪れてほしい。

 ――中国は6月30日に香港国家安全維持法を強行採決し、その日のうちに施行した。台湾への影響をどう考えるか。

 中国との関係では、台湾では2013年からひまわり学生運動があった。香港の雨傘運動と同様に中国の強硬なやり方に抵抗するものだった。

 香港の一国二制度は50年は保証されるものだったが、今回の法制によりわずか23年で自由民主主義が制限されることになった。香港国家安全法は香港基本法よりも上にある。これで、表現、言論、宗教の自由が厳しく制限される。国際社会には中国の暴挙に対して抗議する動きがある。

 台湾政府は、台湾に住む香港人や移住を希望する人を対象に専門窓口をつくった。移住希望者はかなり多い。

中国は尖閣の現状変更やめよ、自衛隊の先島配備に注目

 ――中国は尖閣諸島周辺の領海侵犯を繰り返している。

 台湾名「釣魚台」は中華民国に主権を有するという立場だ。日中台が所有権を主張する中、一方的に現状を変更しようとする行為は望ましくない。中国が覇権主義で海警が毎日のように尖閣諸島に張り付くなどし、力で現状を変更しようとすることは望ましくない。

 2013年、尖閣周辺で日台双方の漁船の操業を認めた日台漁業協定に基づいて、これまでのように日台が平和な状態で共同で安心して漁業できることを求める。中国は東シナ海だけでなく南シナ海にも進出しており、台湾政府にとって脅威だ。台湾と沖縄は同じ第1列島線に位置する。台湾と日本が安全保障面で戦略的に連携することがますます重要になる。

 台湾政府は、宮古島、石垣島、与那国島への自衛隊配備に注目している。同盟の安全保障の上でとても大切なことだ。


范振國(はん・しんこく) プロフィール

 台湾新竹県出身。台湾大学卒業後、九州大学大学院で経営管理修士号を取得。外交部アジア太平洋局日本政治科課長、台北駐那覇経済文化代表処部長、台湾日本関係協会副秘書長などを歴任し、現在に至る。

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