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「やんばる地方」から沖縄の健康長寿の復活を

北部12市町村の首長ら「やんばる健康宣言」

 「国際コンソーシアム協定連携シンポジウム」(公立大学法人名桜大学と北部振興会が主催)がこのほど沖縄県名護市の名桜大学内で開催され、北部(通称「やんばる地方」)の12市町村の首長らが、医の拠点づくりを推進する「久米島モデル」を実施することによって健康長寿の復活を目指す「やんばる健康宣言」を採択した。(那覇支局・豊田 剛)

名護でシンポジウム、「久米島モデル」で医の拠点づくり

島民8000人の医療データを収集・蓄積し活用

「やんばる地方」から沖縄の健康長寿の復活を

「やんばる健康宣言」を採択する沖縄県北部12市町村の代表=11月3日、沖縄県名護市の名桜大学

 県北の大宜味(おおぎみ)村はかつて世界屈指の長寿村として知られていた。それが、2015年のデータでは女性の平均寿命が87・7歳となり県内41市町村中9位、男性が80・1歳で同28位と、県平均(81・9歳)レベルにまで落ち込んでいる。

 同村が長寿要因として挙げられていたのは、①低カロリー、低食塩・豊富なミネラル、緑黄色野菜などの伝統的沖縄食の摂取②適度な運動量③自立・社会参加④家族・親族・地域の助け合い――などだった。現在、こうした習慣がやんばる地方で失われつつある。

 やんばる地方の医療問題は深刻だ。2006年に名護市の沖縄県立北部病院の産婦人科が医師不足による休止に追い込まれたことをきっかけに、北部病院と北部地区医師会病院(名護市)の2病院を統合して基幹病院を設置しようという動きが具体化している。それに向けて昨年、約11万人の署名が集められ、北部12町村総決起大会が開催された。

「やんばる地方」から沖縄の健康長寿の復活を

主催者あいさつする山里勝己・名桜大学学長

 今回の国際コンソーシアム協定連携シンポジウムは、やんばるの医療を守るという総決起大会の趣旨をも踏まえて開催されたもの。冒頭、名桜大の山里勝己学長が、やんばるが長寿地域としての地位を失ったことを指摘した上で、地域や学術機関を超えた研究、交流の重要性を主張。「ハワイの大学と結んでいる国際コンソーシアムを通じて、沖縄とハワイ双方にとってインパクトある取り組みをしたい」と語った。

 やんばる健康宣言では、「アジェンダ8」と題して①健康情報を生かす能力、ヘルスリテラシーの向上②医の拠点づくり③知の拠点づくり④専門人材の育成⑤医療データの蓄積・活用⑥ITインフラの活用⑦産業誘致・育成⑧パートナーシップ――8項目の実施を明記した。

 宣言は12市町村の首長または代理が採択。その代表として、北部市町村会長を務める當眞(とうま)淳宜野座村長が「やんばるの地で安心して健康に暮らしていくには相応の環境づくりをすることが必要となる」と述べた。

 健康宣言事業を実施するに当たり、「久米島モデル」を参考にすることも決まった。2015年、内閣府の沖縄離島活性化推進事業の一環として「久米島デジタルヘルスプロジェクト」が始まり、島民8000人の医療データを収集・蓄積しながら肥満症や糖尿病などの生活習慣病を改善・予防するための事業を行った。この成功事例を、人口13万人規模のやんばる全体に広げることが当面の目標で、12市町村のニーズを名桜大がくみ上げ、地域住民に還元する仕組みだ。住民の健康意識の高まり、医療情報集積、雇用創出、企業誘致、医師不足解消というよい流れができることが期待される。

 シンポジウムは続いて、弘前大学(青森県弘前市)、名桜大学、琉球大学(西原町)、ハワイ大学の健康科学の研究者らが登壇し、健康長寿の現状や課題、目下の取り組みなどを報告。

 弘前大学の中路重之教授は、「都道府県や市町村が単独で健康宣言する例は幾つもあるが、12市町村が足並みをそろえて実施するのは国内初の事例だ」と評価した。中路氏は、青森で短命県返上のための地域健康づくり活動「岩木健康増進プロジェクト」を展開。職場、学校、自治体が一体で取り組み、企業も巻き込んで運動に取り組んでいる。沖縄については、健康長寿ランキングが下がっており、「40代と50代の健康余命が全国最下位クラス」で、今すぐに対策を講じる必要があると強調。「簡単に打ち上げ花火的にやるだけでは解決できない。産官学民を超え、地域を超えて取り組まねばならない」と訴えた。弘前大と名桜大学は今年度、研究開発提携を結んだ。データ比較研究を行い、健康寿命の延伸のための課題を明らかにする。

 健康長寿復活のための解決策を提示したのは琉球大学の大屋祐輔教授だ。①健診の実施②食生活の改善③運動と、酒たばこを辞めること④地域サポート強化――の実施を奨励した。琉大は現在、小学校での食育プログラムに取り組んでいる。大屋氏は、「ネットワークが強い地域ではすべてがいい方向に向かう」と指摘。学校から家庭、さらに地域に波及する意義を強調していた。

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