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「会社とジェンダー」を特集するが「家庭力」を見逃している東洋経済

◆男女格差の実例列挙

 女性の社会進出が話題になって久しいが、男女の性差(ジェンダー)をめぐる議論は今も尽きることがない。最近でも森喜朗・前東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長が「女性の役員がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言し、物議を醸した。そもそもジェンダーとは、社会的・文化的背景の中でつくられた性差のことで、生物学的な男女の性差とは異なる。人口減少、生産労働人口の減少が続く中で、企業が今後生き延びるには女性の活躍の場をいかに創出していくかが鍵になるという。

 こうした企業とジェンダーをテーマとして東洋経済(6月12日号)が特集を組んだ。「会社とジェンダー~これが世界のビジネス常識」と題した企画のつくりは、「女性を戦力化できない日本企業に未来はない。いまだに根強く残る男女格差は、日本経済が再び競争力を取り戻すための必須の条件だ」と特集のリード文にあるように、これまでの日本の企業風土が女性軽視であり、それが日本の経済成長を妨げているという論調だ。

 同誌はまず、企業における男女格差の実例を挙げる。一つは世界経済フォーラムが報告する「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」なるものを掲げ、日本が先進国で最下位にあることを指摘。また、国内の上場企業において女性役員の占める割合が10%未満と低いこと。女性管理職の比率でみても、欧米アジア各国と比べ低いと強調。さらに国会議員や国家公務員、裁判官、弁護士、医者といった各分野での女性の占める割合も30%に満たないとし、同誌はこれらを「『ジェンダー』をめぐる大問題」とまくし立てる。

◆女性活躍支援は当然

 そこで同誌は女性の社会進出を阻む要因、すなわち女性が出世できない理由として「妻(女性)への育児集中」を挙げる。「女性の円滑な職場復帰や復帰後の戦力化を後押しするには、家事・育児など家庭内の女性の負担を減らすことが絶対条件だ。それには男性側のより一層の(育児)参加が欠かせない」としている。

 元ゴールドマン・サックス証券副会長のキャシー松井氏は、「日本では労働人口が2055年までに4割減るといわれている。早期に多様性のある人材を育成しておかないと、組織はジリ貧になる」と前置きし、その上で「女性を育成し、育児と仕事の両立を支援することは、コストではなく人材投資だと捉えるべきだ」と強調する。確かに、人口減少で働き手が少なくなれば女性に活躍してもらうことは当然の成り行きで、そのためには環境、給与、労働時間を改善していくことはジェンダーなどという言葉を使わずとも当然のことであろう。

 ところで今回の特集の中で違和感を覚えるのは、家庭の持っている力=家庭力を見逃していることである。育児は女性だけで行うものでないことは当然のこと。ちなみに江戸時代、育児に責任を持っていたのは「父親の背中を見て育つ」という言葉があるように男性(夫)であった。さらに言えば、庶民の夫婦は共働きが多く、子供に対してはそれが他人の子供でさえも地域の大人がいつも関心を持って関わっていた。

 今回の特集の中で、社会学者の上野千鶴子氏は、「諸外国でも女性の労働力化は進んでいるが、女性だけが負担を一身に受けてはいない。育児というケア労働をアウトソーシングする仕組みをつくったからだ。その1つが公共化、2つ目が市場化だ」と語る。

◆地域力高める施策を

 ここで言う公共化とは保育園の充実、市場化とはベビーシッターや家事使用人として安価な労働者を雇用することだというが、育児いわゆる子育ては決してアウトソーシングで事足りるものではない。ましてや金銭のやりとりで子育てできるものでもないのは自明の理である。

 従って、今後安定した日本社会の構築を見据えた場合、女性の社会進出の推進は欠かせないものだとしても、それ以上に家庭力・地域力を高め人材を育成する施策を実施していく必要がある。

(湯朝 肇)

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