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温暖化社説で説得力ある論調の日経、原発訴えぬ政府を叱咤する産経

◆早急な計画策定要望

 米国主催の気候変動サミット(首脳会議)で、菅義偉首相は2030年度の温室効果ガス削減目標を、現行の「13年度比26%減」から「同46%減」と大幅に引き上げる方針を表明した。

 各紙は東京を除き6紙が社説を掲載したが、特に日経は通常2本建ての枠に1本の大社説で説得力のある現実論を展開。産経も大社説で原発の積極利用を打ち出さない政府を叱咤(しった)し、また対策で日本が「世界をリードする切り札」を有することを熱く説くなど真摯(しんし)さを強く感じさせた。

 日経(25日付)は「経済と両立する温暖化ガス削減を」が見出し。同紙がそう言うのは、菅首相が表明した目標が、他紙も指摘するように、「達成への道筋は相当な困難を伴う」(日経)からである。

 温暖化ガス排出を30年度までに13年度比で26%減らすという従来の目標には、産業別の対策で見込める削減を積み上げたという裏付けがあったが、新目標は30年までのわずか9年で、この目標の7割以上も上回る削減を実現しなくてはならないのである。

 日経は「温暖化ガスを多く排出する素材産業などは、短期間で産業構造の転換を求められる。それに依存する地域経済は大きな痛みを迫られる可能性が高い」として、政府に対し、こうした実情を踏まえ、「削減目標に実効性をもたせるための計画を早急に決めてほしい」と要望。その際は、日本の産業競争力が全体として低下することのないよう目配りし、計画を現実的な内容に修正していく柔軟さも必要だ、とした。経済紙らしい尤(もっと)もな注文である。

 排出削減の加速には、化石燃料への依存度を極力減らす必要があり、石炭火力発電を再生可能エネルギーなどに転換することが急務だが、太陽光発電は天候に左右され、平地の少ない日本では大規模な同発電の適地も限られる。期待の洋上風力発電も建設や試験などを考えれば30年までの本格展開は難しい。

 同紙は「エネルギーの安定供給を確保するために原子力発電を選択肢からはずすことはできない」として、現在作成中の次期エネルギー基本計画の中で原発の役割を明確にすべきだと指摘。同時に、二酸化炭素を回収し地中に埋めたり再利用したりする技術や水素利用、宇宙太陽光発電などイノベーションの加速と新産業の育成も重要と説くも、「当面は既存の技術を総動員するとともに、規制の見直しなどで着実に排出を減らすしかない」と強調する。妥当な現実論である。

◆高温ガス炉の活用を

 産経(25日付)も大意は日経と同じで、残された9年間で46%減に近づけるには「原発の再稼働以外に選択肢は見当たらない」のに、「政府から原子力の積極利用の声は聞えてこない。政治はいつまで原子力発電から逃げ続けるつもりなのか」と叱咤し、新目標を機として、原発活用の検討に向き合ってもらいたい、と訴えるのである。

 産経はただ要求するだけでなく、妙案をも提示する。前述した「切り札」だが、日本原子力研究開発機構が開発した次世代原発・高温ガス炉の存在である。小型モジュール炉であるだけでなく、原理上、炉心溶融事故は起き得ず、発電しながら水から水素を製造できるといい、国際的な評価も高いという。「このイノベーションを発展させない手はない」というわけである。

 読売(24日付)や本紙(26日付)も原発の活用を訴えているが、産経のような新提案はなし。朝日(25日付)、毎日(同)は相変わらず原発利用を否定し、それでなくとも実現が容易でない目標達成に、理想論に終始している。

◆中国に削減強化促せ

 ただ、日本の取り組みも世界最大の排出国である中国や2位の米国が先頭に立たなければ、地球規模の削減は進まない(日本の排出量は世界全体の約3%)。日経が指摘するように、「気候変動は地球規模で考えることが大切」であり、今回、新たな目標を提示しなかった中国に対し、日本は米欧と連携して一層の削減を促すべきだろう。

(床井明男)

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