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柏崎刈羽原発テロ対策での東電失態に朝日以上の厳しさ見せた日経

◆再建計画見直し必至

 福島第1原子力発電所の事故を起こした東京電力ホールディングスに再び原発を運転する資格はあるのか――。

 保守系紙、日経3月29日付社説の冒頭である。

 この社説は、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)で外部からの侵入を検知する複数の機器が故障し、代わりの措置も監視機能が不十分でテロ対策に不備があったことを受けてのものである。

 この問題では他に朝日(24日付)、読売(27日付)、産経(28日付)の3紙が社説で取り上げ、いずれも厳しい論調を掲載したが、最も手厳しかったのが、冒頭に記した日経である。

 反原発論の朝日は、見出しからして「東電に運転資格はない」と、日経と同じ言葉で東電を批判したが、文中では「原発を運転する資格があるとは思えない」とやや遠回しな表現である。

 それに比べて、先の日経である。同紙は3・11から10年を経て、柏崎刈羽であらわになったのは、「信頼を裏切る行為の数々だ」と指弾。

 原子力規制委員会が東電に対して、原子炉に核燃料を入れるのを禁じる是正措置命令を出すと決めたことで柏崎刈羽の再稼働が当面見込めなくなったため、「再建計画を描き直さなければならない」と国と東電に迫ったのである。

 それというのも、東電は原発事故後、国から1兆円を資本投入され、事実上国有化されることで存続し、事故処理と福島復興に当たることになったが、そのための有力な資金源が柏崎刈羽の再稼働だったからである。再稼働ができれば、1基で年1000億円規模の収益改善効果が見込め、東電は収益計画に再稼働を織り込んできた。

 だが、現実は再稼働は進まず、電力自由化の下で首都圏では顧客を大きく失いつつあり、除染費用の回収には1500円程度の株価が必要だが、現状は300円台にとどまる。「再建計画の実行がますます厳しくなっても、着実な廃炉と福島の復興は止めてはならない。そのための資金を途切れずにどう確保していくのか、持続可能な再建計画に見直していかねばならない」というのが同紙の主張であり、同感である。

 再建計画については、朝日も「別の方策の検討を急ぐべきだ」とし、産経も「抜本的な練り直しが必要だ」と指摘する。

◆期待するが故の苦渋

 論調の厳しさとともに、保守系3紙に共通するのは東電へ期待するがゆえの苦渋である。見出しに「原発テロ対策の責任重い」と掲げた産経でも、厳しさという点では「安全に対する意識が根本から問われる深刻な事態である」と指摘し、朝日以上と言えるかもしれない。

 苦渋というのは、国が現在、エネルギー基本計画の改定作業を進めている中で、温室効果ガスの排出削減のためにも安全性を確認した原発の活用が焦点になっているからである。「その中で東電が再び原発に対する信用を損なう事態を招いた責任は重い。信頼回復に向けて同社の姿勢が厳しく問われている」と説く同紙には悲壮感さえ漂う。

 読売も同様で、「国のエネルギー政策の選択肢を減らさないためにも、東電は失われた信頼の回復に全力で取り組むことが重要である」というわけである。

 もちろん、厳しさという点では、読売も産経と似た「テロ対策の軽視が甚だしい」との見出しで、福島原発の事故で「安全対策の重要性を痛感したはずなのに、なぜこのような事態が起きるのか。…度重なる失態を猛省しなければならない」と東電を非難。「社会から厳しい目を向けられていることを改めて認識し、核防護措置の再構築に努めてもらいたい」と厳しい指摘を投げ掛ける。

◆他の原発も総点検を

 読売はまた、他の原発の警備体制にも同様の問題がないのか、電力各社や規制委は総点検する必要がある、としたが尤(もっと)もな指摘である。

 保守系紙で本紙の論評がなかったのは残念である。

(床井明男)

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