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新型コロナウイルス変異種出現で前向きな取り組み強調した女性自身

◆遺伝子追究は限定的

 年末年始にかけ、英国や南アフリカの型と異なる新型コロナウイルスの新たな変異種が日本でも検出された。これらは感染力が強い英国型と共通の変異があることまでは分かっているが、遺伝子配列の追究も限定的で、実際の感染力などは不明だ。各新聞やテレビ媒体の流す情報も、今のところ大体ここまで。

 週刊誌では、この強い感染力の情報を受けて、週刊文春は1月14日号「コロナ変異の恐怖 東大准教授が警鐘『日本でも別の変異が』」で、同大学の大橋順准教授(集団遺伝学)が「感染者が増えると基礎疾患を持つ人や高齢者の絶対数が増えるわけですから、重症患者や死亡者の数も増えることになる」と見込む。週刊現代1月9・16日号「コロナ変異種『日本上陸』全情報」も感染力の強さを強調しており、内容は文春とだいたい同じ。

◆宿主と共存で弱毒化

 ただし具体的な感染度や変異種の正体についての言及はなく、物足りない。そんな中、週刊女性自身は1月19・26日号で、「ウイルス&免疫学専門家が断言 日本の新型コロナ変異種は『★(強を〇の中に)感染力も重症化率は低下する!』」のタイトルで、変異種発生などの条件についてうまくまとめ、今後の大胆な予測も立てている。

 結論から言うと新型コロナウイルスの変異種は①感染力は従来種より強いが、“恐怖のウイルス”ではない②変異は小さく、猛毒化しない③従来のワクチンの効力も生きている。もし効力がなくなっても、対応するワクチンは割と簡単に作れる―以上、三つに分けて今回の変異種を簡潔に特徴付けている。

 その内容は①では「ウイルスが増えていく過程で、遺伝子のコピーにエラーが起こり性質の異なる変異種が生まれていくだけです。そして、たまたま生まれた、感染力が強いという有利な特性を持った変異種が生き残っているということ」(玉谷卓也・順天堂大学医学部講師<免疫学>)で、あくまで自然の変化の“ブレ”内で起きている現象だという。

 「変異種と聞くと、悪魔がパワーアップしたような印象を持つ人が多いのですが、ウイルス自体が意思を持って、感染力を上げようとしているわけではありません」(同)

 ②「(ウイルスは)必ず何かに寄生しないといけない。寄生した宿主を殺してしまったら、ウイルス自身も死んでしまう。ウイルスは宿主と共存するために、“弱毒化”していきます。天然痘のように強い病原性をずっと維持しているウイルスはありますが“強毒化”していったウイルスは存在しません」(長崎大学熱帯医学研究所・森田公一所長<ウイルス学>)という説明から、変異の繰り返しで重症化させる能力が低い新型コロナウイルスが今後増えていくと見る。

 「新型コロナウイルスに感染して重症化したり、命を落としたりする原因は、ウイルスそのものの病原性だけでなく、感染した人の免疫系の過剰反応によって、自らの体を傷つけてしまうことにある」(同)という事実を重視する。

 ③「このワクチンは改良が容易なので、変異したウイルスに有効なワクチンが必要になったとしても、時間をかけずに開発できると考えています」(玉谷先生)と。

 そして「“感染力の強い変異種の出現”というニュースに神経質になるよりも、ワクチンの効果と重症化率が下がったウイルスの出現を期待して、感染予防を徹底しよう」と締めくくっている。

 理路整然とした説明、今後の展開、予測も明瞭で実にいい情報の出し方をしていると言える。結果的に楽観的な見込みとなっているが、拙速のように見えても理論的な蓋然(がいぜん)性があれば、悲観的な情報より希望的な観測の方が、未知な状況に対しては人々にプラスの力を与えると思う。

◆副反応の言及も必要

 同誌は社会ニュースや話題のスポット紹介や健康、お金、美容などの実用的な情報が満載の週刊誌。記事内容に角度を付け、読者を煽(あお)ったり一定方向に誘導したりする意図は感じられない。ただワクチンの接種リスク、副反応について言及があればもっと良かった。

(片上晴彦)

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