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中国がシリアに触手、「一帯一路」で難民帰還と復興訴えるCGTN

◆露の支援で国際会議

 シリアの首都ダマスカスで11、12日の両日、内戦により国外に脱出した約600万人の難民の帰還を呼び掛ける国際会議が開催された。会議には中国も参加、同国の国営外国語放送CGTNは13日、「中国の一帯一路構想(BRI)は、戦後のシリア再建に貢献できる」と報じ、シリア復興へのインフラ投資に中国が興味を示していることを明らかにした。

 会議は、シリアへの介入を強めるロシアの支援を受けて開催された。米軍はシリア撤収を進め、影響力を弱めており、会議参加国には、中国、イラン、ベネズエラなど反米諸国が名を連ねた。大量の難民を受け入れている欧州連合(EU)は不参加だ。

 サウジアラビアのニュースサイト「アラブニュース」によると、この会議に対し米政府は「国際社会が求めていることをロシアとシリア政権が実施していないことから目をそらすための手の込んだ見世物」と非難した。

 モスクワを拠点とする米国人政治アナリスト、アンドリュー・コリブコ氏はCGTNへの投稿で、シリアのアサド大統領が国外の難民に対し、「帰国し、国の再建に貢献するよう」呼び掛け、「そのために中国のBRIが主導的な役割を果たす可能性がある」と指摘した。

◆5海戦略構想が復活

 シリアは2011年の内戦突入前、「5海戦略」構想を描いていた。コリブコ氏によるとこれは、黒海、カスピ海、ペルシャ湾、紅海、地中海をつなぐ重要拠点として自国を位置付け、3大陸を結ぶ地政学的優位性を生かそうというもの。

 内戦が終結へと向かう中、この構想が「中国などシリアのパートナー国の支援」で復活への道が開けたとコリブコ氏は指摘する。

 会議には、パキスタン、イラクも参加した。パキスタンはBRIの基幹プロジェクトで、中国からパキスタンを経てアラビア海へと抜ける「中パキスタン経済回廊(CPEC)」の整備に参加している。

 イランはすでに、中国との大規模インフラ整備で秘密合意を交わしていることが報じられている。アラビア海に面しパキスタン国境に近いイランのチャバハル港はかつて、インドと欧州を陸と海で結ぶ北南輸送回廊(NTSC)構想の一部とされており、「CPECとNTSCを一つにまとめ、将来の中国によるイランの港湾インフラへの投資と合わせることで、理論的にはCPECをイラン・イラクまで延長できる」という大構想の可能性を指摘する。

 イラクもすでに「シリアと同様、中国とは密接なパートナー」であり、「ロシアが管理するシリアの地中海岸のタルトゥス港を通る回廊が出現する可能性は高い」とコリブコ氏は主張している。

 また、コリブコ氏は、シリア、中露、イラン、イラク、パキスタンが回廊の構築で力を合わせれば「シリアを短期間で再建し、難民の帰還を促進する」ことができると主張する。

◆強まる中国の影響力

 この構想の下でBRIと5海戦略が結び付けば、パキスタンからイラン、イラクを経てシリアへとつながる広大地域で中国の影響力が増すのは必至だ。この地域は、イスラム教シーア派が多数派のイランが進めている「シーア派の弧」ともほぼ一致する。

 米国の政治アナリスト、クリスチナ・リン氏は、イスラエルのニュースサイト「タイムズ・オブ・イスラエル」で、「国際社会がイランの核開発計画にとらわれている一方で、中国はシリアとの政治的、経済的、戦略的つながりを着実に拡大してきた」と指摘。「シリアとレバノンが西の欧米に拒否され、東の中国に向き、新たな戦略の弧が生まれ、その一方で中国はBRIを基に西に軸足を移している。新たな『グレートゲーム』の再現となるのだろうか」と中国の進出に警戒感を露(あら)わにした。

(本田隆文)

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