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核廃棄物最終処分地への応募を「『財源』の魅力が追い込んだ」とアエラ

◆建て直しのチャンス

 高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定をめぐり、北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長が9日、第1段階の「文献調査」に応募した。これに対しアエラ10月12日号に「核のごみ最終処分場『文献調査』が過疎の町を追い込む/不適地も『財源』の魅力」と題した記事を載せている。

 同誌の取材で片岡町長は、応募理由について「町はこれまで風力発電などいろいろなことにチャレンジし財源確保に努めてきた。だが、新型コロナがあって経済が疲弊して4、5年先どうなるかわからなくなった。いま手を打てるものは打っていかないと」と話している。記事はこれを引用し、「寿都は過疎の町だ。(中略)交付金や補助金への依存度が高く、財政難の町にとって2年間の文献調査に応じるだけで入る最大20億円の交付金は大きな魅力だ」と続け、町の難儀を強調している。

 しかし記事の指摘がなくても、公式の記者会見で町長は同様のことを述べている。疲弊する自分たちの町への交付金はどれほどありがたいか、その偽らざる心境が察せられた。自主的な判断で町を救おうという首長の行為が、なぜ「『文献調査』が過疎の町を追い込む」(見出し)ということになるのか。むしろ過疎の町が建て直しのチャンスを掴(つか)んだわけだ。

 食物を栄養素として消化すれば排泄物が出、それを処理するトイレの場所がいる。国民のエネルギー消費で出る高レベル放射性廃棄物の処分を引き受けるのは公的心の発露だ。その候補地に手を挙げたことが卑しい行為として、あしざまに言われなければならないいわれは何もない。原発に敵対する底意が見え見えなのに、一流誌でござい、と客観報道を装っているアエラの手口こそ卑しむべきだ。

◆一方的に不適地指摘

 さらに、経済産業省が2017年公表の最終処分地を示した「科学的特性マップ」では、寿都町の大半が「適地」となっているのに、「(寿都にかかる)32キロほどの活断層帯」の存在とその恐れを指摘する北大名誉教授の見解を載せ、一方的に「不適地」を言い立てるのにも違和感がある。それは見識の一つとして認めるべきだろうが、「適地」とする専門家の意見も並行して載せておくべきだ。

 実際、政府は、幅広い地域から候補地を選び最適な処分地を絞り込みたい意向で、多くの候補を求めている。それなのに、応募の段階で、「不適地も『財源』の魅力」(見出し)として、「不適地」と決め付けるのは、門前払いを食らわすのを是とするようなもので、候補地募集の趣旨に合わない。しかも、今後、十数年かけて3段階で念入りな調査が行われる予定になっている。

◆中露の原発開発輸出

 一方、原発関連の記事にサンデー毎日10月18日号で、「小泉純一郎元首相が菅首相に緊急直言!『脱原発を目指せば長期政権もあり得る』」がある。

 小泉元首相は事あるごとに「原発については、よく勉強した。原発は要らない」と発言しているが、この記事でもそう。その確信はどこから出てくるのか、よく分からない。

 今、中国やロシアは原発の技術開発や増築、さらに輸出を進めており、フランスは電源の約7割を原子力に頼る原発大国。米国もスリーマイル島での事故後、原発利用で試行錯誤しながらきたが、ここにきて新型炉の開発に積極的だ。

 第一、日本が原爆反対、原子力の平和利用を言い始めたのは戦争直後で「第2次大戦の愚を繰り返してはいけない。今後、科学技術によって自分で資源を得るんだ」という先見に基づいている。経済大国と称されて鼻高々になり慢心すれば、そんなものはすぐへし折られる。

 日本は世界第3位の国内総生産(GDP)を誇る大国なのに、経済を支えるエネルギー供給が不安定である。これが国民生活の不安要素となっているという事実を直視すべきだ。

(片上晴彦)

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