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米中対立激化、「二股外交」否定し民主陣営の結束呼び掛けた産経と本紙

◆問題は中国の暴走に

 <ボーッとしてるんじゃないよ!>

 まさに、チコちゃんに一喝されそうな新事態である。

 米国のポンペオ国務長官がカリフォルニア州で行った対中政策に関する演説は、歴代政権が続けてきた「関与政策」(中国との協調を重視する政策)が誤りで失敗に終わったと断じ、中国との全面的な対決を宣言するものであった。

 ポンペオ氏は中国を「マルクス・レーニン主義体制」だと断じ、中国共産党を「われわれの自由で開かれた社会を食い物にした」と糾弾。習近平国家主席を「破綻した全体主義イデオロギーの信奉者で、覇権への野望を抱き続けている」と非難した。そして「自由世界はこの新たな暴政に打ち勝たなくてはならない」と訴えたのだ。

 貿易対立から始まった米中対立は経済、テクノロジーから知的財産窃取、チベット・ウイグルなどの人権問題、覇権の野望を露(あら)わにした香港の統制強化、南シナ海などの軍事化などでの対立に拡大した。そして米国はスパイ行為などの拠点だったとしてヒューストン(テキサス州)の中国領事館を閉鎖させ、対抗する中国も成都市(四川省)の米国総領事館を接収するという異例の新事態となったのである。

 問題はどこにあるのか。新聞論調は例えば朝日(28日付社説)でも「専制色を強める中国共産党政権にあるのは確かだ。新疆やチベットで少数民族の人権が抑圧され、香港の自由は奪われ、南シナ海での軍事拠点化が続いている」「中国の行動を看過せず、法の支配と人権尊重を求めるのは当然だ」と分かりきっている中国の非は一応認める。「中国による南シナ海の軍事化や香港民主派への威圧は、国際社会のルールや自由・人権の規範に反し、民主的な国際秩序を脅かしている」(毎日29日付・同)。「中国の習近平政権が国際社会の警告に耳を傾けず、法の支配や貿易ルール、人権を無視する措置をとってきたことは否定できない」(読売28日付・同)など、いずれも中国の国際ルールを無視する暴走にあることを指摘する。

◆対話を主張する他紙

 だが、ではどうするのか、となると途端に抽象的になる。朝日は冷戦型思考を否定し「もはや力による対決は非現実的であり、協調による共存が望ましい」となる。中国にはそれが通用しなかったから今日の事態を招いたとは考えないようだ。毎日は米中対立激化から「偶発的な衝突」を危惧し「ともに大国としての責任の自覚」を呼び掛けても、「肝要なのは、協調の余地を」残して対話の取り組みを主張。「短期的な改善が難しいにしろ安全保障上の対話など危機管理のすべはあるはずだ」(日経28日付・同)、「米中双方が冷静さを取り戻し、収拾策を探らねばならない」(読売・同)ぐらいでは、不測の衝突防止の呼び掛けにはなっても、それ以上の智恵は見当たらない。

◆「幻想」から目覚めよ

 これに対して産経(29日付主張)と本紙(27日付社説)の主張は明確だ。産経は中国の覇権の野望を打ち砕くために「価値観を共有する民主主義国家の結束が欠かせない。そうした『新たな同盟』を米国が主導するというのだろう」と米国の訴えに理解を示した。その上でトランプ氏に「これまでの同盟軽視の姿勢を改め」るよう苦言を呈し「民主主義国家を糾合する指導力と、G7などの国際舞台での行動力」を発揮することを求めた。日本に対しても「中国の脅威にさらされている隣国、民主主義国家として、米国と協調して対立に関与していく覚悟」を迫ったのである。

 「日本も中国幻想から目覚めよ」のタイトルでポンペオ演説を論じた本紙は、演説が「トランプ政権内で周到に準備されたもの」と分析。「米国がようやく中国に対する幻想を捨て去り、共産主義はすべてが悪だという前提に立ったの」だとした上で「われわれ日本人も中国幻想から目覚めなければならない」と訴えた。

 その上で強大化する中国の野望阻止は「ひとえに自由民主主義陣営が共産主義の脅威を正しく認識し、結束して対抗できるかどうか懸かっている」として「価値観を共有する国々を対中包囲網に巻き込む努力をしていくべき」だと強調したのだ。両紙とも「二股外交」を否定する正論を展開したのである。

(堀本和博)

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