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短観論評で冷静な分析示した朝日、経済紙として物足りなかった日経

◆雇用への影響を懸念

 2日付読売「日銀短観悪化/需要喚起へ予算執行を急げ」、日経「企業の苦境見極め柔軟な政策対応を」、東京「景気の急激悪化/雇用維持に全力傾けて」、3日付朝日「コロナと経済/回復の道筋描くには」、毎日「景況感11年ぶり低水準/悪影響の長期化に備えを」、本紙「6月日銀短観/苦境の長期化回避に全力を」――。

 大企業製造業の景況感がリーマン・ショックで落ち込んだ2009年6月以来11年ぶりの低水準となった日銀短観について、産経を除く6紙が掲げた社説見出しである。

 今回の日銀短観は、回答期間が5月28日から6月30日という――新型コロナウイルスの感染拡大により4月7日に緊急事態宣言が東京など7都府県で発令され、5月25日には全国で同宣言は解除となった――コロナ禍の只中(ただなか)での、企業の景況感などを問うたものである。

 各紙社説に大きな違いはなく、雇用への影響を懸念するものが多かった。例えば、読売は5月の失業者数が200万人に迫り、一時的な休業者の数も400万人を超えているとして、政府に企業の資金繰りを支えて失業の増加を防ぐこととともに、見出しに取った「需要の喚起」を求めた。

 「雇用維持」を見出しにした東京は、政府が失業対策の軸に据えている雇用調整助成金の活用について、同制度は「一時しのぎにすぎ」ず、「今回ほど大規模な雇用悪化に対応するよう設計されていない」として、「強力な新制度を早急に導入すべきだろう」と訴えた。

 趣旨は分らないでもないが、同紙も強調するように、対策には「早急」さが求められているのに、新制度の導入では制度設計から始めねばならず、余分に時間もかかり現実的ではないだろう。

◆防疫と経済の両立を

 今回の社説で各紙にほぼ共通した認識は、新型コロナとの闘いには長期化が予想されることである。

 このため、読売は「政府・日銀は必要に応じて追加策を講じるべきだ」とし、日経も同様に「さらなる対策が必要となる事態も視野に抜かりなく備えてほしい」と強調。「長期化に備え」を見出しにした毎日は、企業の厳しい景気認識から政府が描く年後半からのV字回復は現実味が乏しいとして雇用対策や検査体制の充実などを求めた。

 経済の現状と今後の対応について、「経済の落ち込みを脱する道筋を見いだせるか。正念場を迎えている。感染拡大への警戒は怠れない。防疫と経済のバランスを工夫しつつ、双方の水準を高めることが必要だ」と冷静な分析を示したのが、朝日である。

 同紙は、コロナの感染拡大による前例のない経済活動の制約に対し、各国の政府・中央銀行は空前の規模の財政・金融政策で、雇用・所得や企業の資金繰りを支え、市場の混乱を抑え込もうとしてきたと指摘。「これまでのところ、日本経済全体としてみれば、辛うじて踏みとどまってきたといえるだろう」と政府・日銀の対応を評価したが、「問題はこれからだ」と強調する。

 今後、感染が再拡大して最悪の事態になり、強力な接触制限で感染を抑え込む選択肢を取らざるを得ない場合に備え、「これまでの経験を詳しく吟味し、経済への負荷が小さく防疫効果の大きい手法がないか、見極めを急ぐべきだ」と同紙は説くのだが、尤(もっと)もな指摘である。

◆新たな道筋探る必要

 また、国内で感染拡大を抑えられても、「課題は残る」という。世界経済の先行き不透明感が依然大きく、「3密」を伴う経済活動もワクチン普及までは以前の姿に戻すのは難しいからだ。同紙はデジタル化の進展など新しい需要を取り込み、人材や技術開発、設備への投資を続ける道筋を、政策当局、民間企業ともに探っていく必要があるとしたが、妥当な指摘である。

 これに比べて、日経は見出しに「柔軟な政策対応を」としながら、その具体的な中身の記述がなく、全体的にも経済紙としてはやや物足りなかった。

(床井明男)

(サムネイル画像:Gerd AltmannによるPixabayからの画像)

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