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防衛相の唐突な「イージス・アショア」導入撤回発表の背景に迫った文春

◆強い政治案件の側面

 ミサイル防衛システム「イージス・アショア」導入が事実上「白紙撤回」された。この決定の背後には「重大な疑義」があると週刊文春(7月2日号)が報じている。

 6月15日の河野太郎防衛相の発表はいかにも唐突の印象を免れなかった。しかし、総額4500億円にも上る買い物で、品書きと性能が違うのであれば、いかに土壇場であれ買い物をやめるのは賢明な判断だ。

 例えて言えば、火が消せない高い消火器、それも購入後に買い手が修正する必要があり、それでようやく使えるか使えないか、という代物を、もし最初から分かっていて売買契約を結んだのなら、この経緯はぜひ明らかにしてもらわなければならない。税金が使われることはもちろん、国の防衛に関わることなのだから。

 そもそもイージス・アショアは「二〇一七年、北朝鮮の弾道ミサイル発射が相次ぎ、その脅威に備えるため、同年末にあっという間に導入が閣議決定された」ものだ。

 だがこの買い物は最初から「政治案件という面が強かった」と「三十年近く防衛省を取材するジャーナリストの半田滋氏」が同誌に明かしている。「一七年二月、安倍首相はトランプ大統領との初会談で、『アメリカの武器を買ってくれ』と頼まれ、これに応えて」というのが切っ掛けだったというのだ。

 ところが、「当初は自衛隊に“買い手”がいなかった」状態で「陸・海・空のどこも欲しがっていなかった」という。現場が欲していないものを上の都合で強引に買わされそうになったのである。しかも調べてみれば、品書きと性能が違うというのだから、いかにでたらめな買い物だったかが分かる。

◆射撃管制能力なし?

 わが国に飛んで来るミサイルを迎え撃つ、というのがミサイル防衛。その要諦は敵ミサイルを捕捉するレーダーだ。導入が決定されたのはロッキード・マーチン社の「LMSSR」。ところが、これには肝心の「射撃管制能力は無い」という。飛びながら敵ミサイルを捕捉できないというわけで、これでは何のために飛ばすのか分からない。「弾道ミサイル防衛にふさわしいレーダーなのか、重大な疑義が生じる」のだ。

 問題はLMSSRに射撃管制能力がないということを「官邸や防衛省幹部は知らなかったのか」ということだ。しかも、昨年3月には米に調査団を派遣している。報告書は官僚文書で分かりにくいが、それでもはっきり書いてある。「射撃管制能力は無い」と。

 さすがにこのことに気付いた議員はいるもので、昨年5月、「長島昭久・元防衛副大臣が…質問主意書を安倍内閣に提出している」。回答は「ミサイル防衛のために必要な性能や機能を有するものであると認識しているが」としつつも、「詳細については、本件イージス・システムの具体的な対処能力を明らかにするおそれがあることから、お答えを差し控えたい」というものだった。

◆改憲も視野に論議を

 河野防衛相の発表後、政府はすぐに国家安全保障会議(NSC)を開いて、新たなミサイル防衛を検討し始める。そこで出てきたのが「敵基地攻撃能力の保有」。つまり、ミサイル発射前に敵基地を攻撃して、未然に発射を防ぐことだ。これをめぐっては「専守防衛」かどうか常に議論があった。同誌は触れていないが、最初は1956年2月、鳩山一郎首相(当時)が「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としていた。その後、わが国がこの政策を取っていないのは、国民のコンセンサスが得られていないからだ。

 国際情勢や防衛装備の性能や概念は日々変わっている。既に「プルアップ・プルダウン機動」など複雑な飛行をするミサイルも開発され、これにイージスが対応できるのか、もはや時代遅れのミサイル防衛概念ではないのか、の疑義もある。こうした問題をこそ、同誌は提議すべきだ。しかし「これを争点の一つにしての十月解散も浮上してい」ると、最後まで政治まみれの視点だ。国防、その根幹である憲法改正も視野に入れて論じるべきだ。

(岩崎 哲)

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