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主要企業回答の賃上げ低迷に成果主義の勧めを強調する日経社説

◆労使協調が賃金抑制

 2019年春闘で自動車や電機など主要企業の、労働組合の要求に対する一斉回答は、前年水準を割り込む数字が相次いだ。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は6年連続となったが、景気の先行き不透明感から勢いは見られなかった。

 各紙社説では、日経(14日付)がさすが経済紙だけに、大社説(通常2本立ての枠に1本のみ)で内容に厚みもあった。

 「なぜ賃金が伸び悩んでいるのか」――素朴だが重要な問いに同紙は、世界経済の不確実性が高まっていることも背景にあるとしつつ、「根本的な問題が2つある」と指摘する。一つは日本企業の生産性の低さであり、もう一つは雇用維持のコストが大きいことである。

 特に後者については、「将来の人件費負担を考え、退職金や社会保険料負担の増加につながるベアに慎重になる。労働組合も雇用維持を優先し、賃上げ要求は控えめだ。労使協調が賃金を抑え込んでいる」という。

 確かに一理あり、日本企業の伝統的雇用慣行がなせるマイナスの側面である。

 もっとも、だからこそ、同紙が不可欠とした「能力や成果に応じた賃金決定の仕組み」、いわゆる成果主義が日本企業にも徐々に採用されるようになって久しいが、それでも現在の低迷ぶりである。

 同紙は「少子高齢化が進むなか、高度外国人材や経験豊かな高齢者を戦力にするためにも、結果で評価する報酬制度が要る。企業が付加価値を高め、賃金の原資も増やしていく循環をつくらねばならない」と指摘するが、そのためには成果主義を採用する企業がもっと増えないとダメということなのか。

 同紙はまた、「ひとつの企業で長期にわたって社員の雇用を守ることに固執するのは現実的でない」として、「人が成長分野に移っていきやすい柔軟な労働市場をつくり、市場のなかで雇用を確保していくという考え方に転換すべきだ」と説くが、それで果たして十分な雇用が確保できるのか。欧米的企業手法への礼賛的傾向が強過ぎないか気になるところである。

◆内部留保の活用提言

 他紙では、読売(15日付)のように、「世界経済の先行き不透明感が、春闘交渉に影を落としている」との論調が少なくない。それでいて、「賃金の底上げを着実に進め、景気を下支えしたい」(読売)と主張するのだが、そのためにどうすべきか。

 これも、ほとんどが「企業全体の利益水準は総じて高い。内部留保は450兆円程度まで積み上がっている」(読売)、「トヨタを含めて輸出企業の利益水準は総じて高い。上場企業の手元資金も100兆円を超えて過去最高だ」(産経15日付)として説くのが、内部留保(手元資金も同義)の活用である。

 産経の「世界経済に対する過度な悲観が景気に悪影響を与える事態は避けたい」は確かにもっともな指摘であるが、25年以上前のバブル崩壊経験のトラウマから過度に悲観する傾向が強くなり、万一の備えである内部留保を崩すこと(大幅な賃上げ)ができないとすれば、適正水準はどれくらいなのかなど、より深い吟味が必要なのかもしれない。

◆労組応援団の朝・東

 日経が欧米流の強者の論理が強い傾向なのに比べ、朝日、東京などはやはり労働者側に立った論調が強く出た。「これ(低調な回答)では家計消費は増えず、先行き不透明な景気の足をさらに引っ張る」(朝日15日付)と景気に絡めてはいるが、「経営側は、働き手の要求に積極的に応えるべきだ」「労働組合側には、賃上げが社会的にも求められていることを踏まえ、粘り強い交渉を望みたい」という具合である。

 特に東京(14日付)は、賃金格差の是正や働き方改革の視点から論じ、「一定の成果へ動きが広がった」と評価。こと、連合に対しては、「格差是正への本気度が問われている」と応援団ぶりを発揮した。

 4月から大企業を対象に導入される残業規制では、読売が、残業時間の減少で残業代の総額が年1兆円規模で減るとの民間試算があるとして、「労働時間の短縮を生産性向上に結びつける。同時に、残業代の減少分を補う対策を検討すべきだ。一時金(ボーナス)や手当の上積みなども一案ではないか」としたのはその通りである。

(床井明男)

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