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子宮頸がんワクチン禍―牛田班の治療による回復例なし

 子宮頸がん予防ワクチン接種後に健康被害を訴える声が相次ぎ、「積極的な接種勧奨」が中止されて間もなく4年半になる。この間、国と製薬会社に損害賠償を求める訴訟を起こすなど、被害者たちの不信感は高まり続けている。背景には「厚労省の被害の原因究明、治療法確立への取り組みが十分でない」という憤りがある。

 先月12日、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」(松藤美香代表)は、被害者たちの痛みに関する治療法を研究する「牛田班」(牛田享宏・愛知医科大学学際的痛みセンター教授代表)の研究内容の訂正や検証を求める要望書を加藤勝信厚労省相宛に提出した。
 今年8月開催の副反応検討部会資料で、牛田班の治療による回復事例として同連絡会会員の少女のケースが挙げられた。しかし少女本人には同班の提唱する治療法で回復した自覚がなかった。また同連絡会の会員は現在603人だが、牛田班の治療で回復したという報告は、ただの1件もない。

 牛田班は、被害者の症状として特長的な「慢性の痛み」を取り除く診療を担当。「軽い運動や考え方の癖を前向きに変える認知行動療法で7割の被害者が、回復または改善した」としている。しかし、被害者などの大半は、痛みだけでなく不随意運動や意識喪失、運動障害、慢性疲労、記憶障害など広範な症状が出ているのだ。
 これらの症状を訴える被害者が多い同連絡会では、牛田班への不信感は根強い。同班が、副反応被害の原因は「心身の反応」「機能性身体症状」であるという前提で、痛みに限定した治療法の研究を進めているためだ。
 同連絡会の松藤代表は、要望書提出について「厚労省は今、牛田班を異様な熱心さで推していて、脳炎を認めていない。認知行動療法など心因性による“治った”“治る”という結論を導き、それを世の中に広めようとしているのではないかと感じている」と話している。

 一方、そうした広範な症状を訴える被害者たちの支えとなっているのが、神経内科の観点から病態や治療法を探っている「池田班」(池田修一信州大学教授代表)の研究。被害者の多くが脳炎や自己免疫疾患を訴えている事実があるからだ。
 被害者の多くが、患者の血液を体外循環させ、血液中の自己抗体や免疫複合体など病気の原因となる物質を吸着・除去する「免疫吸着療法」などの自己免疫疾患や脳炎に対する治療法で回復、改善した事例がいくつもある。同研究班は昨年3月、同ワクチンが脳機能障害を引き起こした可能性があると公表した。

 これに対し、一部のデータに捏造があったなどの疑義が寄せられ、信州大に外部調査委員会が設置されたが、昨年11月、同委は「実験成果は必ずしもイコール科学的解明ではない」が「不正行為は認められなかった」との調査結果を示した。
 被害者連絡会の会員たちの間では、免疫吸着療法が症状緩和の手段として浸透しており、その治療法を受けるために鹿児島まで赴く人もいる。
 そうした経験則から同連絡会などは、副反応検討部会が言うような「心因性」ということはあり得ないと確信を強めている。

 今年7、8、9月と3カ月続けて牛田班の研究成果が発表された。松藤代表は、同ワクチンをめぐっての対立が深まっている現状に対し、それを解決するには、まず、池田班の研究成果として免疫吸着療法などで改善した事例が幾つもあるという事実などを公表することが必要だと強調。
 松藤代表は「ともかく原因を究明して、治療法を確立する。そのためにも強い姿勢を示してほしい」と話している。
(佐藤元国)

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