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北方領土 4島返還へ世論結集を

軍備増強・開発進めるロシア

 北方領土問題への理解と関心を深めるため制定された「北方領土の日」は、今年で41回目を迎える。2月7日は、日本とロシアの国境が択捉島とウルップ島の間にあることを定めた日露通好条約が調印された日であり、北方領土が日本の領土として国際的にも明確になった歴史的な日だ。戦前には約1万7000人が暮らした日本固有の領土であるにもかかわらず、第2次大戦の終戦直前、当時まだ有効だった日ソ中立条約を破って侵攻したソ連に不法占拠され、その状態は今もなお続いている。
 昨年9月29日、菅義偉首相は就任後初めてロシアのプーチン大統領との電話会談に臨んだ。首相は「平和条約締結を含む日露関係全体を発展させていきたい。北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打ちたい」と表明。これに対しプーチン氏は「安倍前首相との関係を高く評価しており、菅首相との間でも建設的に連携する用意がある。2国間のあらゆる問題について対話を継続していく」と応じた。

 ◇憲法で「領土割譲禁止」

鈴木直道北海道知事(左)から北方領土問題解決を求める要望書を受け取る菅義偉首相=2020年11月10日、首相官邸(時事)

鈴木直道北海道知事(左)から北方領土問題解決を求める要望書を受け取る菅義偉首相=2020年11月10日、首相官邸(時事)

 しかしこの日の朝、ロシア軍東部軍管区は、北方領土を含むクリール諸島(千島列島)で1500人以上が参加する軍事演習を開始したと発表した。首脳会談にぶつけてきた軍事演習は、領土問題で譲歩しない姿勢を示し、日本側を牽制(けんせい)する狙いなのだろう。加藤勝信官房長官は同日の会見で「北方四島におけるロシア軍の軍備の強化につながるものだ」と述べ、外交ルートで抗議したことを明らかにした。

 実際に、ロシア軍は北方領土を極東の軍事的要塞として重視しており、2016年には最新鋭の地対艦ミサイルシステムを配備。昨年10月には主力戦車の配備も報じられるなど、着々と軍備増強を図っている。

 また19年2月には、サハリン(樺太)と北方領土をつなぐ光ファイバー回線を開通させるなど、インフラ整備も進められている。この計画には中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)も参画しており、日本政府の抗議や遺憾表明は無視された。このほか、住宅建設や交通網の改善などに多額の予算を投じるなど、北方領土の開発を着々と進めている。

 さらに昨年7月、ロシアでは「領土割譲禁止」を明記した改正憲法が発効した。同憲法は国境を画定する行為などは例外として認めており、日本との北方領土交渉継続の余地を残したとの見方もあるが、メドベージェフ安全保障会議副議長(前首相)は「以前も不可能だったが、今や憲法の条文に領土割譲を目的とした行為は容認されないと記されている」と主張している。

 ◇首相が強い決意示せ

 9月の電話会談で両首脳は、18年に当時の安倍首相とプーチン氏が交わした首脳間合意を再確認し、近いうちに対面形式の会談を目指すことで一致した。

 18年合意は、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速するとし、日本側が事実上、4島返還から2島返還に舵(かじ)を切ったものだが、ロシアの姿勢はかえって強硬になっている。一方で、安倍氏や当時の河野外相は記者会見や国会答弁で「日本固有の領土」「不法占拠」などの表現を避け、ロシア側への配慮をにじませてきた。

 北方領土が不法占拠されてから今年で76年となり、元島民も高齢化している。菅氏には首相として迎える初めての北方領土の日に、いま一度4島返還への強い決意を示してもらいたい。ロシアは4島占拠はヤルタ協定に基づいて参戦した先の大戦の結果だと正当化しているが、ヤルタ協定が領土譲渡の法的効力をもたないことは米国も認めている。4島返還に向けた世論結集に向けて、国民啓発、とりわけ若い世代の教育と国際社会への情報発信をいっそう強化すべきだ。

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