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きょう41回目の「北方領土の日」 国内の啓発で足元固め

北海道総務部北方領土対策本部北方領土対策局長 篠原信之氏に聞く

 太平洋戦争後、旧ソ連(現在のロシア)によって不法に占拠された北方領土。択捉島、国後島、色丹島および歯舞群島の四島返還を求めた取り組みは終戦直後から始まり、75年の歳月が経過したが実現には至っていない。昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大によって北方四島と北海道本島との交流等事業は中断を余儀なくされたが、そうした中でも北海道は次年度に向け北方領土返還要求運動に向けた事業の準備を進めている。新年度の取り組みを北海道総務部北方領土対策本部の篠原信之北方領土対策局長に聞いた。
(聞き手=札幌支局・湯朝 肇)

コロナ禍でも交流再開準備

北方領土をめぐり日本とロシアの間で政府間の交渉を積み重ねていますが、領土返還に向けて際立った成果が出ていません。北海道も政府の外交交渉を後押しすべくさまざまな事業を展開していますが、昨年1年間はいかがだったのでしょうか。

篠原信之氏

 

 昨年は新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、北方領土の施策を掌(つかさど)るわれわれにも大きな影響を及ぼしました。これまで北海道は北方四島との交流等事業や国内での普及啓発・啓蒙(けいもう)活動を行ってきましたが、一部中止や規模縮小を余儀なくされた事業がありました。何よりも人と人との往来ができないことが大きい。日本政府もロシアを含めた諸外国も入国・渡航制限を出しており、道内でも現在、移動の自粛を呼び掛けているほどですから、具体的な事業や活動が十分できなかったというのが実情です。

 例えば、北方四島との交流等事業では毎年いわゆるビザ(査証)なし交流、元島民の墓参、自由訪問が行われており、昨年も日露政府および実施団体間で計画は合意していたのですが、いざ実施段階というところで新型コロナウイルス感染症の影響により実施が叶(かな)わなくなってしまいました。四島交流専用船「えとぴりか」や航空機を使った墓参など交流等事業が全てできなかったのは、極めて残念なことでした。

 ただ、コロナ禍ではあっても何ができるかを考えながら、国内の普及啓発・啓蒙をしっかり行い返還要求運動の足元を固めるという思いで取り組んだ1年でもありました。中でも昨年はチャーター機を使って北海道本島側からの北方領土上空慰霊を実施しました。昨年10月21、25日の2日間にわたって5便を飛ばし、元島民の方々87名を含め、合計125名の方々に搭乗していただきました。コロナ禍で搭乗者には出発日14日前から健康観察をしていただき、当日には検温および体調の聴聞、さらに機内でも3密を回避するという感染症対策を行っての上空慰霊でした。元島民の方が手作りの位牌(いはい)を手にして、四島に向かって合掌する姿がとても印象的でした。

昨年はコロナ禍という中ではありましたが、その間、ロシアでは憲法改正をめぐって変化があったようですが。

北方領土

 

 ロシアでは昨年7月に憲法改正の国民投票があり、賛成多数で成立しました。改正された憲法には外国への領土割譲の禁止の条項が盛り込まれました。さらに昨年末には領土割譲の呼び掛けを行っただけでも刑事罰の対象になるといった法律改正まで行われました。こうしたロシアの動きは、われわれ北方領土問題を解決しようとする者には、少なからず精神的な影響を与えます。

日本でも北方領土問題に熱心だった安倍晋三首相が突然辞任され、当時、官房長官だった菅義偉氏が首相に就任しました。

 安倍前総理は在任中、ロシアのプーチン大統領と度重なる首脳会談で関係強化を図ってきました。そうした中で2016年のロシア・ソチでの首脳会談では安倍総理から総合的な8項目の「協力プラン」を提示し、平和条約締結に向けて取り組んできました。一方、北方四島における共同経済活動では「ゴミ処理」や「観光」などの分野で経済協力を進めるプロジェクトを進めていたところです。そうした中での辞任でしたから、残念な気持ちでもありました。

 ただ、菅首相も安倍政権では官房長官を担っており中枢におられた方ですし、また就任後北方領土問題については安倍前総理の施策を引き継いでいくことを表明し、また間髪入れずにプーチン大統領と電話での首脳会談をもち、1956年の日ソ共同宣言を基に平和条約の交渉を加速化させるとした2018年のシンガポールでの日露首脳合意を確認したとしています。それは、1月18日から始まった国会での施政方針演説でも、56年の日ソ共同宣言以降の日露両国間で交わされた諸合意を踏まえて交渉を進めていくと表明されています。従って、北海道としても政府の外交交渉を後押ししていけるよう取り組んでいきたいと考えています。

新型コロナウイルスの脅威はまだ収まっていませんが、21年度はどのような事業を計画しているのでしょうか。

 新しい年が始まったからといって新型コロナウイルスの感染が全く止まるということはないと思います。しかし、そうだとしても万全な安全対策を取った上で北方四島との交流等事業を実施していきたいと思っています。そこで現在、千島歯舞諸島居住者連盟や北方領土復帰期成同盟、北方領土問題対策協会など実施団体などと連携を取りながら新型コロナウイルス感染症対策のためのマニュアルの策定を進めています。また、四島交流専用船「えとぴりか」についても船内のゾーニングや隔離室の設置など、万全な感染症対策を講じた上で、交流等事業を少しでも進めていけるような態勢を整えていきたいと考えています。いわゆるビザなし交流の開始以降これまで交流等事業は途絶えることはありませんでした。

 一方、北方領土返還要求運動を支えてきた元島民1世の方々は高齢化し、平均年齢も85歳を超え、支援が必要です。また、返還要求運動の足元を固める意味でも後継者育成が急務です。コロナ禍だから何もできないというのではなく、全国への啓蒙啓発、若年層を対象とした取り組みなど地道な活動を進めていきたいと考えております。

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