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仙台市中学生自殺を体罰のせいにするな

 新聞報道によると、4月に仙台市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、教諭2名が生徒の頭を拳でたたいたり、粘着テープで口を塞いだりするなどの体罰を加えていたことが判明した。それまでは、いじめを苦にした自殺と考えられていたが、奥山恵美子市長は「体罰が自殺の引き金になった可能性は高い」という。奥山氏の発言は、150万円の恐喝があっても「いじめとまでは言えない」とした横浜市教育長に比較すればはるかにマシだが、万一、いじめ加害者を庇う目的があるとすれば、巧妙であるが故に悪質だ。
ByCBUtnCAAAK-7o
 公務員は法に基づいて職務を行うものであり、教師も例外ではない。公教育における体罰は、実態はともかく、戦前から一貫して違法であり、今回の教師の体罰は厳しく罰せられて然るべきだ。しかし、中学生が体罰を受けたからといって果たして自殺するだろうか。授業中寝ていて拳骨で殴られても、授業中に騒いで口を粘着テープで塞がれても、中学生のプライドは死を選ぶほどには傷つかない。何故なら、しょせん教師は中学生にとって「他者」だからである。思春期において決定的に重要なのは生徒間、すなわち「仲間内」での評価だ。現代の子供達の関係性を語る際のキーワードである「スクールカースト」に言及する者が最近多くなったが、彼らの中でスクールカーストの決定要因に「教師の覚えがめでたい」ことを挙げる者はいない。進学のための内申書という実利を除き、中学生にとって教師からの評価など些細なものであり、体罰も教師への憎悪を生んでも、自殺感情を生むとは一般的には考えにくい。

 では何故「体罰が自殺の引き金になった可能性は高い」という発言が巧妙なのか。

 中学生が自殺した原因は、同級生からのいじめでほぼ間違いないだろう。ただ、日常的にいじめられており、そのいじめを解決してくれるかもしれないと期待していた教師、最後の砦と思っていた教師から体罰を受けた事で、自殺者が絶望した可能性は否定しきれない。その意味で奥山氏の発言には妥当な一面はある。だが、それ以上に、権力者発言が真相究明に与える危険性は大きい。

 自殺者の周辺に、明確に法を犯した大人(2名の教諭)がおり、体罰行為も明らかになっている。一方で、同級生を自殺に追い込んだであろう者たちは未成年に過ぎず、いじめ行為の詳細は不明である(それを知るためには綿密な聞き取り調査が必要だ)。さて、教育委員関係者、警察関係者、第三者委員会など、事件の真相を究明すべき立場の人は、「教師の体罰により自殺した」という物語と「同級生のいじめにより自殺した」という物語の、どちらが平穏な解決と考えるだろうか。

 彼らが、市長発言を奇貨として事なかれ主義に陥ることなく、徹底的に「いじめ」行為の詳細を調査し、自殺事件の全貌を明らかにすることを願ってやまない。

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