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ありがたい“暴露”

 今年になって連日のように、やれ不倫だの、やれ学力詐称、政治資金の流用だのという話題が巷をにぎわしている。対象が配偶者であれ、一般国民であれ、いずれも他人を欺く行為が発覚することによって信頼を失う“事件”である。

 マスコミが証拠をつかんで報道したことで波紋を広げているのだが、当の本人はそのまま表舞台から消えていく場合もあるし、時がたてば少なからず再び活躍する姿を見るようになることもある。

 政治家の場合は、次の選挙に出馬して当選すれば“禊(みそ)ぎ”を済ませたことになり、そこで有権者の信頼を回復できればさらなる活躍も可能だ。タレントやコメンテーターにしても業界に顔が利く人物の引きがあれば、自粛期間を置くか、キャラを変えるかして雑誌やテレビに再登場するようになり、失われた信用を回復することも十分できる。

 それが世間というものだろう。しかし、こんな世を生き抜く知恵は教科書で学ぶものではないし、言葉で教えられるものでもない。周りの大人の生き様を見ながら、自分の経験を通して徐々に体得していくしかない。

 ただ、一つだけ教訓があるとすれば、自分に真実であることの大切さだろう。人を欺くことは結局、自分を欺くこと。自分のことを自分以上に知っている人はこの世にいない。だから人を欺いていることを誰が知らなくても、自分だけは知っている。その心の闇、心の重荷は自分だけが背負っていかなければならない。

 だから今回、秘めた欺きが暴かれて当面は体面が丸つぶれになり、家計や日常生活にも大きな困難が伴うかもしれないが、そのおかげで墓場まで持っていかなければならなかった重荷を一つ軽くすることができた。そう考えれば、それはむしろありがたいことだ――。

 ある時期の夏目漱石なら、今そんなことを考えるのかもしれない。(武)

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