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コロナワクチンの接種でにわか専門家が増える

 知り合いの医師から最近、こんな趣旨のメールが届いた。新型コロナウイルス・ワクチンは、高齢者ではなく若者から接種すべきだ。なぜなら、行動の活発な人ほど、感染しやすく、また感染させやすいからだという。一理あるなと思った。

 だが、先月28日、感染対策分科会の尾身茂会長の説明をテレビで聞いて考えが変わった。高齢者に接種が進めば、緊急事態宣言の解除がしやすくなる。重症者は高齢者が多い。その数が減れば、医療体制の逼迫(ひっぱく)が改善されるからだという。

 一般的なウイルス感染拡大を考えれば、前者が正しいように思える。しかし、現状における現実的な対策の観点からは、重症者・死者が多い高齢者を先に接種という考え方の方が正しいと思った。見方を変えると、結論が違ってくることはよくあることだ。

 こんなことを言ってきた知人もいる。厚生労働省の調べでは、先月21日までに、ワクチン接種後に死亡した例が85人も出ているのだから、もっと副反応の恐ろしさについて報道してほしい、と。

 85人が死亡したのは事実だ。しかし、死因は脳卒中や心不全などが多く、しかも8割以上が65歳以上だ。接種との因果関係については「評価できない」ケースがかなりあり、現時点で重大な懸念はないというのが厚労省の見解である。

 「危機の時には、多くの人が何かを言いたがる」――東京大学名誉教授の早野龍五さんは近著「『科学的』は武器になる」で、こう指摘している。それは素人だけでなく、科学者でも同じ。自分の専門外の分野でも「ついつい何か言いたくなる」のだそうだ。

 前述の知人以外にも、ネット情報を信じて、「絶対、こっちが正しい」と、にわか科学者になって語る情報提供者が筆者の所にやって来る。お人よしの性格から、耳だけは貸すのだが、信憑(しんぴょう)性が疑われるネタが多く、時間を取られてばかりいる。

(森)

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