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子供の「やりたい」見つける

不登校専門オンライン家庭教師

夢中教室WOW!代表 辻田 寛明氏に聞く

 文部科学省が昨年公表した不登校児童・生徒の数は、約18万人。その中でフリースクールなどに通う子はごく一部で、学校にいけない子供の受け皿はまだ少ないのが現状だ。何らかの理由で不登校になっている児童・生徒や、登校しても教室以外の別室で過ごすなどしている小学生から高校生までを対象に、オンライン家庭教師「夢中教室WOW!」を昨年11月から運営している辻田寛明氏に話を聞いた。
(聞き手=辻本奈緒子)

達成感積み重ねる学びを
不登校児童の受け皿に

「不登校専門オンライン家庭教師」というユニークな発想に至ったきっかけは。

夢中教室WOW!代表 辻田 寛明氏

 つじた・ひろあき 平成5年、茨城県生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了。2019年、社会問題をビジネスで解決することを目指す株式会社ボーダレス・ジャパンに社会起業家コース枠で新卒入社。2020年9月、ワオフル株式会社を設立。現在不登校の子供専門「やりたい」を引き出すオンライン家庭教師「夢中教室WOW!」を展開中。

 不登校の子供に限らず、日本の子供たちの自己肯定感が低いことを危惧し、家庭教師を始めようと思った。ヒアリングをする中で、学校が合わなくなったときに「自分は普通じゃない」とか、レールから外れてしまったように感じた子供たちに出会った。特にそうした葛藤の中で苦しんでいるのが不登校の子供たちだと思い、不登校向けの家庭教師を始めることにした。

 当初はオンラインでない家庭教師やフリースクールも検討した。コロナ禍でオンライン授業のハードルが低くなったこともあるが、福岡で何件かプレ授業をした時に、そもそも家から出られない子がいることが分かった。フリースクールに通っている子は不登校児のごく一部で、大半の子供たちが家の中でもがいている。外に出るのはハードルが高くても、オンラインなら一歩踏み出せるのではないかと思った。また、周りにフリースクールのない地方からも問い合わせがあり、全国どこでも必要な人に授業を届けられると実感している。現在は九州や首都圏の小中学生が学んでいる。

どんな授業を行っているか。

 学校の授業とは違い、60分の1対1授業でまずその子の興味のあるテーマを見つけ、それについて一緒に調べ、「ミッション」(課題)を達成していく。私から何か教えるのではなく、一緒に勉強するという方針だ。

 例えば、ある子は話しているうちにヨーロッパの建築に関心があることが分かり、「それじゃあヨーロッパの建物に詳しくなってみようか」ということになった。授業の終わりに「ミッション」としてテーマを決めて調べてきてもらい、次の授業で発表するという授業をしている。オンライン通話の画面共有機能を使って、二人で一緒にグーグルアースでその建物を見ながら学ぶ。「宿題」というと学校のような印象なので、「ミッション」という言葉を使い、達成したことで自己肯定感を高めることのできる授業にしている。解答のないテーマであることも大切だ。

児童・生徒に起こった変化は。

 最初は「何かやってみたい」という気持ちはあっても、不安が強くカメラに顔を見せられない子がいた。なかなか話もできなかったので長い目線で見るようにして、保護者を通じ様子を共有していくうち、5、6回目で顔を見せてくれるようになった。今は一緒にプログラミングの勉強をしているところだ。

 他にも学校で「算数が苦手」とされていた小学2年生の子は、話してみると実は数字が大好きだということが分かった。素数や方程式など、小学校高学年や中学校で習うような内容も理解して、とても楽しそうに学んでいる。学校の勉強が合わなかったとしても、それぞれの子供に合った学び方のできる教育が、日本には必要だと感じた。

授業や運営に当たって気を付けていることは。

 小学校低学年から中学生まで、どの年齢層であっても、子供と同じ目線で接することを心掛けている。

 また、保護者と緊密に連絡を取るようにしている。毎回授業が終わった後に授業内容や子供の様子を報告し、保護者からも家庭での様子を教えてもらっている。コミュニケーションに不安を抱えがちな子も自分を肯定してもらえるので、家にいてもやることがなく「暇だ」と漏らしていた子が授業の時間以外にも調べものをするようになった、というような声をいただいている。

子供たちの自己肯定感が低下する原因は。

 日本の学校教育は足並みを揃(そろ)えようとして、無自覚に「普通」という物差しをつくり出してしまっていると思う。しかし、その「普通」に馴染(なじ)めない子が一定数いるのは当然だ。それに対する生きづらさや「自分は普通じゃない」という思いが、自己肯定感を低くしてしまっているのではないか。

 私は大学時代から、地方から来た修学旅行生と接する機会があり、子供たちの自己肯定感が低いことを感じていた。大学院に進み研究でインドネシア・ジャカルタを訪れた時、スラムなどに暮らす子供やその親たちに話を聞くと、インフラも整っていない環境であっても、日本人のように生きることの息苦しさは感じていなかった。豊かなはずの先進国であるが故の、日本の課題に気付いた。

 子供はやりたいことを見つけたら無邪気に取り組むエネルギーを持っている。その可能性を狭めているのは、実は周りの大人や社会ということもある。子供たちから学ぶことは本当に多い。

夢中教室WOW!をどのような存在にしたいか。

 子供たちが「自分を変えたい」と思った時に、一歩を踏み出すためのきっかけづくりをして、背中を押してあげたい。社会にとっては、学校が合わなくなったとしても「学校に行けなくても大丈夫」と言えるような選択肢の一つとなり、安心材料として認識されるようになりたいと考えている。

 目標は、不登校児童・生徒18万人の3・5%に当たる6000人に授業を届けること。そうすれば、社会において一つの力になれると考えている。複数人での授業で友達がつくれたり、各分野の専門家を講師に招いたりと、いろんな授業モデルが考えられる。

 子供たちが何かに夢中になって、新しい世界への気付きや驚き、感動で人生にワクワクしてもらえたらと思う。いろんな学び方、成長の仕方があっていいんだよ、と伝えていきたい。

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