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未来を担う子供たちに建築業の魅力を伝えたい

石川県建築士会青年委員会がオリジナル絵本を作成

 石川県建築士会青年委員会では、未来を担う子供たちに、建築業の魅力を知ってもらおうとオリジナル絵本を作成した。第1弾は伝統的な「金澤町家」を舞台に、家に住み着く妖怪たちが登場し、少年と仲良く、かくれんぼをする。建築士たちが絵本を作るのは全国的にも珍しく、引き続き第2弾も制作予定だ。(日下一彦)


第1弾は金澤町家を舞台に、妖怪たちが少年と「かくれんぼ」

未来を担う子供たちに建築業の魅力を伝えたい

10体の妖怪が登場するオリジナル絵本「おばあちゃんのまちや」を手にする、石川県建築士会青年委員会の橘裕之委員長

 絵本のタイトルは「おばあちゃんのまちや」。金沢市内に住む少年が、大好きな祖母の町家を訪ね、1人でお泊まりする。家には古くから住み着いているさまざまな「妖怪」がいて、「妖怪町家」と呼ばれていた。玄関に入ると、「ワ~ッハッハッ~!おらたちをみつけられるかな?」。さっそく妖怪たちの親しげな声が聞こえてくる。

 「もういいかい!」。少年の呼び掛けに「もういいよ」と妖怪たち。描かれているのはしっくい塗りの壁にいる「ぬりかべ」、土間のたたきにいる「たたきなめ」、「ついたてたぬき」など。少年が「みーつけた」と順に指さすと、「みつかっちゃった」と明るい声。妖怪はいずれも不気味さがなく親しみやすい。絵本と同時にデジタル絵本も作成し、ナレーション入りで4分余りにまとまっている。コロナ禍でも、幼児たちが絵本に触れずに読み聞かせが楽しめるように工夫されている。

 先に進むと、仏間でおばあちゃんがお経を唱えている。部屋には「かけじくゆうれい」「ざしきわらし」など新たに4体。おまけにおばあちゃんの顔はのっぺらぼう。遊び終えて一休みし、おばあちゃんとちゃぶ台に用意されたおやつを囲む。

 彼らはおばあちゃんが子供の頃からずーと家に住み着き、古い町家を守ってきた。だから家を大切に使っているおばあちゃんを妖怪たちは大好きだ。もちろん、おばあちゃんもそうだ。こんな妖怪なら、子供たちも一緒に遊びたいと思うだろうし、町家独特の少し不気味な雰囲気も和らぐことだろう。「おばあちゃんちはいつも賑(にぎ)やかで楽しいなあ。また明日も遊ぼうね」との弾んだ少年の声で物語は終わる。妖怪は全部で10体登場し、デジタル絵本は4分余りにまとまっている。

建築士の人材不足解消を目指す、引き続き第2弾も制作を予定

 絵本は『建築の魅力を伝える絵本』として、同青年委員会のメンバー14人が集まって考えた。設計事務所や施工会社に勤務し、いずれも40歳前後で、1級建築士の資格を持っている。制作は一昨年、団塊世代の退職で業界の人材不足を受けて同委が企画。物語は幼稚園や保育園の先生方などに子供たちの趣味や趣向を聞き、それを参考に話し合って作った。イラストは公募で選ばれた市内在住の女性が描いた。「子供たちが見て怖くならないようなキャラクターにしました」と実行委員長の橘裕之さん。

 絵本制作について、「業界に入って来る人材が減ってきています。建築の魅力を若い人たちにも伝えたい。学生だけでなく、幼稚園の頃から建物の魅力に触れてもらい、その良さを知ってもらいたい。それには絵本にするのが、最も響くのではないか」と橘さん。

 年末に幼稚園で読み聞かせをしたら、おばあちゃんちと同じだという声が出ていた。「現在、コロナ禍で積極的な読み聞かせは控えていますが、収まってくれば積極的に働き掛けたい」(橘さん)。絵本は県内の幼稚園や保育園・こども園に無料で贈呈している(2冊目からは500円)。一般には1冊1000円で販売している。絵本は今後、子供たちに人気のヒーロー物や探偵物で建物、建築の良さを伝えていきたいという。


金澤町家情報館

未来を担う子供たちに建築業の魅力を伝えたい

オリジナル絵本「おばあちゃんのまちや」の題材になった町家

 絵本の題材になった町家。市の指定保存建造物。築160年余り、藩政期に大工が自宅として建て、大正期まで子孫があめ屋を営んでいた。その後、米穀商が購入し、2代にわたり営業を続け、10年前、転居を機に市に寄贈。現在、市内に残る伝統的な建物群を保存し、その魅力を発信。改修などの相談も受け付けている。なお、金澤町家は昭和25年より古い建物が対象で、調査が始まった20年ほど前は約10000軒あったが、現在6000軒に減った。

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