«
»

サンゴ礁の危機、サンゴを「白化」から守ろう

沖縄科学技術大学院大学の佐藤矩行教授がウェブ講義

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)でマリンゲノムユニットを率いる佐藤矩行(のりゆき)教授はこのほど、メディア向けにサンゴのゲノム解析、サンゴの白化現象とその再生の可能性についてのウェブ講義を開催した。(沖縄支局・豊田 剛)


マリンゲノムユニットを率いてサンゴのゲノム解読を開始

サンゴ礁の危機、サンゴを「白化」から守ろう

オンラインで講義するOISTの佐藤矩行教授

 サンゴ礁は熱帯雨林と並び、地球上で最も生物多様性に富む場所とされている。ところが、近年の海水温の上昇、海水の酸性化、オニヒトデの異常増殖などの環境悪化によって、世界中のサンゴ礁の存続が危機に瀕(ひん)している。

 こうした背景から、OISTのマリンゲノムユニットは2008年にサンゴのゲノム解読の研究を開始し、11年にはサンゴゲノムの解読に成功。1998年の世界的な大規模白化現象により激減したミドリイシ属サンゴの一種、コユビミドリイシの全ゲノム解読を行った。引き続き、2016年には世界で初めて、サンゴの遺伝子機能を解析するなど、順調に成果を上げている。

 佐藤教授によると、「沖縄は海の生物多様性のホットスポットの最北端に位置しており、海洋面積の0・2%の中に海洋生物の25%が存在している。世界中のサンゴの30%、約400種が生息する」という。

水温上昇に伴い共生していた褐虫藻が減少しサンゴは死滅

 サンゴは毎年5月下旬から6月に産卵する刺胞動物で、褐虫藻と共生するという特徴がある。「海水温が上がりストレスがたまるとサンゴから褐虫藻が逃げる。それが長い間続くとサンゴは死に至る」(佐藤教授)。サンゴが死んで、自体の骨格が透けて白く見える現象がすなわち「白化」だ。1980年ごろから確認されている。

 98年のエルニーニョ現象は世界規模での最初の大白化を引き起こした。特に沖縄本島ではエダサンゴが壊滅的被害を受けた。2回目の大白化は2007年。その後の調査によると、沖縄の海ではほとんどサンゴが死滅したことが分かった。3回目は17年~18年で石垣島と西表島の間の石西礁湖が甚大な被害を受けた。

 佐藤教授は、海水温上昇が直接的な原因とした上で、「地球を一つで考えないと説明できない」と指摘する。1998年の白化は赤道からより遠い方から起きた一方で、2018年~19年の白化は、赤道に近い方から起きたことから、「海水の流れ、さらには、直射の紫外線が悪影響を及ぼしている」と分析した。

白化現象はいずれ本州でも、5年間行った回復策に手応え

 白化でほぼ死滅したのは、サンゴの中でも褐虫藻の依存度が高いコユビミドリイシだ。現在は、サンゴの移植作業など保護活動が行われ、少しずつ回復している段階にあるという。

 沖縄のサンゴ被害はそれ以前からオニヒトデによって引き起こされている。「1957年ごろに初めて小さな大発生が起こり、その後、70年~80年、2000年~10年と周期的に大発生した」。ダイバーらが駆除し、現在もオニヒトデ駆除の活動は続いている。

 佐藤教授が指摘したのは、サンゴが本土に北上していることだ。地球の温暖化とともにサンゴの幼生が黒潮に運ばれ、日本列島で生育域を拡大し、和歌山県の串本、そして今では千葉県館山にまで生息が確認されるようになった。佐藤教授は「沖縄で起こっていること(白化現象)は近い将来、本州の沿岸で起こると思われる」と推測した。

 「OISTはサンゴ礁を人為的に回復させ、または自然に回復させる手助けとして、5年間で15万本を3ヘクタールの海に植え付けたが、今年、大量に産卵した」。佐藤教授はこうした成果に手応えを感じている。さらに、ユニットは別の個体のウスエダミドリイシをゲノム解読することで、環境変化に抵抗性を持つ群体の出現の可能性を見いだした。

 サンゴの保護については、沖縄県のサンゴ保全再生事業として、国立環境研究所、琉球大学、県の事業者らが、恩納村の人工のサンゴ礁に遮光網を張って紫外線をどれだけ防げるかどうかを試している最中だ。どのような網が効果的か試しており、ユニットとしても大きく注目しているという。

0

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。