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テーマは「オリジナル幾多郎ノートをつくろう」

石川県西田幾多郎記念哲学館でモノづくりワークショップ

 今年、生誕150周年を記念して、石川県西田幾多郎記念哲学館では、「オリジナル幾多郎ノートをつくろう」をテーマに、ワークショップが開かれた。開催中の企画展「発見!!幾多郎ノート」に合わせて、5年前に見つかった西田のノートのレプリカを作る催しだ。同館では西田哲学についての講演会や研究会が開かれることは多いが、モノづくりのワークショップは今回が初めて。今月8日、9日の2日間開かれた3回の講習には小学生から社会人、主婦ら15人が参加し、本物そっくりの汚れや傷みを付けたレプリカの制作を楽しんだ。(日下一彦)


「紙文化資料の町医者」平田正和氏が講師、参加者は15人

 「幾多郎ノート」は、2015年10月に幾多郎の遺族の元で見つかった直筆のノート50冊などで、ワークショップでは、その中から京都帝国大(現・京都大)時代の倫理学講義と「Gedanken(思想・思いの意味のドイツ語)」とタイトルが書かれた2種類を見本にした。

テーマは「オリジナル幾多郎ノートをつくろう」

汚れや傷みがそのまま復元され、内部はページごとに西田の歌集が一首ずつ印刷されている、本物そっくりのレプリカ=石川県西田幾多郎記念哲学館

 企画展に展示されているのは、本物そっくりのレプリカで、制作した株式会社工房レストア(大阪市)の平田正和社長が講師を務めた。ちなみに同社では「紙文化資料の町医者」として、全国各地の文化財の修理・修復・複製の制作を行っている。

 ワークショップでは、まず同館の井上智恵子学芸員の説明で展示室を見学した。井上さんは「幾多郎ノート」の発見時からレプリカの制作に至る経緯を報告した。「発見時は湿気を帯び、カビやシミだらけで、このまま放置すれば損壊は時間の問題だったため、修復と翻刻、複製のプロジェクトを進めてきた」(井上さん)という。

 続いて同館の地下ホワイエで作業が始まった。平田さんは貴重な文化財の「原本保存と活用のためのレプリカの制作」を分かりやすく説明した。その後、参加者は幾多郎が使っていたノートの表紙と本文のレプリカを選び、平田さんの指導の下、本文と表紙がズレないように丁寧に糊で貼り付けした。

平田講師も驚く、古めかしく仕上げる参加者の創意工夫

 ノートが出来上がると、レプリカの制作はここからが本番。本物そっくりの真新しいノートに、あえて汚れや傷みを付けていく。白い小口(ノートの側面)に岩絵の具を使って、あえて汚して古めかしく仕上げる。ここで参加者たちの創意工夫が加わる。単色だけでなく、複数の色を組み合わせて、汚れを際立たせたり、気に入った色を出していく。平田さんからは「最初から濃く塗るよりも、何度も重ね塗りすると本物らしくなります」とのアドバイスが入る。あえて汚して、古めかしく仕上げるのがコツだ。

テーマは「オリジナル幾多郎ノートをつくろう」

レプリカ作りに集中するモノづくりワークショップの参加者たち=今月8日、石川県西田幾多郎記念哲学館

 参加者の中には、さらに独創性を加えてヤスリを使って文字をぼかし、質感を出すなどの工夫も見られ、平田さんらを感心させていた。また、小学校4年生女児のセンスに驚く場面も見られた。「製本後のウェザリング(塗装)が上手なんです。汚し作業というと単に汚くすれば良いって感じですが、汚れる場所や位置にも意味があるのです。思わず『おっちゃんの所に手伝いに来て』って勧誘してました(笑)」と後日、LINEに書き込んでいる。

 学生の頃に西田哲学を学んだという女性は、「使うのがもったいないのでお守り代わりにして大切にしたい」と話していた。

 同館でも見本にしたレプリカを販売している。「倫理学講義ノート」の表紙を開くと、「道徳的判断」と題された直筆のメモや関連の図表など、内部の書き込みが忠実に再現され、4ページ目からは通常のノートとして使える。おまけに各ページの下部には「妻の初七日の前日に詠んだ歌」「孫を詠んだ歌」などが一首ずつ印刷されており、西田の人柄を伝える構成になっている。1冊500円(税込み)。問い合わせは電話076(283)6600。

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