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虐待被害児の養育、施設での生活から家庭中心へ

 改正民法が4月に施行され、特別養子縁組の条件が緩和される。虐待などで実の親と暮らせない子供に、温かい家庭を提供する狙いがある。これを機に、被害を受けた子供との養子縁組を考える夫婦が増えることを期待したい。

まだ少ない特別養子縁組

 特別養子縁組は、虐待や経済事情などから親元で暮らせない子供を戸籍上も養親の「実子」とする制度で1988年に導入された。最近は晩婚化などの影響で不妊に悩む夫婦が多くなる一方、虐待を受けて施設に入る子供が増えていることから、この制度に注目が集まっている。

 だが、キリスト教の影響で養子縁組が多い欧米と異なり、血のつながりを重視する文化の日本で、この制度を利用する夫婦はまだ少ない。2017年の縁組成立は616件だけだった。

 昨年6月に成立し、4月1日に施行となる改正民法は養子となる子供の年齢(これまでは6歳未満)を15歳未満に引き上げるとともに、養親の負担を軽減することで縁組を促進させる狙いがある。現在の倍の成立を目指すが、それには課題がある。虐待を受けた子供たちの将来に対して社会全体で責任を持つという意識が広がることだ。

 児童虐待は悪化の一途を辿(たど)り、全国の児童相談所(児相)が18年度中に対応した相談件数は約16万件で、28年連続で過去最多を更新した。虐待は夫婦の不和や地域からの孤立、家庭の貧困など、さまざまな要因が重なって起こる。相談が増えているのは、家庭崩壊によって虐待そのものが増加しているのに加え、虐待に対する地域社会の関心が高まっているからだ。

 この状況を受けて、児相や児童福祉司を増やすなど、虐待防止のための取り組みは進んでいる。しかし、被害を受けた子供たちの心の傷についての理解や、彼らの将来への配慮についてはどうだろうか。児相や児童養護施設の仕事だと思っている人が多いのではないか。

 子供が精神的に健康に育つためには、養育者との「愛着」(アタッチメント)が必要だと言われる。愛情を注いでくれる大人がいて、その大人への信頼が社会生活を送るための人間的な基礎につながるのだ。

 養育者は通常、実の親だが、愛情を注いでくれるはずの親に虐待を受けた子供の心の傷は想像を絶するものがある。乳幼児期に他者への信頼感を築けなかった場合、成人期になると通常の4倍の身体症状を訴えるなど、虐待は健康や脳に深刻な影響を与えることが分かっている。

 虐待を受け親と暮らせない子供の多くは現在、児童養護施設などで生活する。しかし、施設での集団生活では、家庭のような親密な人間関係を体験することは難しく、愛情ある家庭で育つことの方が望ましいから、政府も施設から家庭中心に方針転換している。

行政のサポートが不可欠

 それには家庭で子供を預かり養育する里親制度もあるが、「親子」として永続的な関係を築くには特別養子縁組が理想的だ。ただ、子供の被害状況によっては覚悟を要するケースもあるので、この制度への社会の理解と行政のサポートも欠かせない。

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