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ポツンと山で暮らす喜び、日本人のDNA

 民放テレビ番組「ポツンと一軒家」が人気だ。山の中にある一軒家を訪ね、なぜ不便な山の中に住むのか、住民に暮らしぶりや半生を聞くという、至ってシンプルな番組だが、多くの人が見てしまう理由は分かる気がする。自然に溶け込み、働くことに喜びを見いだして生きる姿が日本人のDNAを刺激するからなのだろう。

 正月早々にやっていた特番を見ながら、両親のことを思った。大正15年生まれの父は70歳近くになってから、近くに民家のない山中に自分で小屋を建て、住み始めた。電気は通したが、水道がないから沢から水を引いた。そこで炭を焼いたり、キノコを栽培したりして暮らしていた。

 山だから熊も出る。いつだったか、小屋に行ってみたら、近くの木に使われなくなった熊床があって驚いた。家族は心配していたが、先祖が残してくれた山林を、自分の代でも守っているという喜びを、父は感じていたのだろう。そんな暮らしを80歳の半ばまで続けた。

 農家に生まれた筆者は小さい頃、よく農作業を手伝わされた。ある時、今は亡き母が、畑仕事をしながら、ぽつりと漏らした言葉が忘れられない。「かあちゃんは、こうやって畑仕事をしている時が一番幸せ」

 番組に登場する人たちは高齢者が多い。語る言葉からは、両親と共通するものを感じる。自然との一体感や農作業の喜び、町中における便利さや娯楽には代えられない価値がある。

 子供の頃、車もテレビも下水道もない暮らしを体験した世代は、都会の人間が知らない幸せを知っているのだ。

 「ポツンと一軒家」のような番組がいつまで続くか、分からないが、筆者の両親世代がいなくなっても、同じような生活スタイルをあえて選ぶ人は残り、多くの日本人に“人間らしい暮らし”について考えさせるのだろう。

(森)

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