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北海道師範塾「教師の道」が冬季講座

道徳の目的は「子供を元気にすること」

 いじめの深刻化や家庭内の児童虐待など子供を取り巻く社会・教育問題がクローズアップされている。その一方で、小中学校では2015年度から道徳が「特別の教科」(道徳科)と位置付けられるようになり小学校は18年度から、中学校は19年度から新しい学習指導要領が全面実施されることになる。そうした中で北海道師範塾「教師の道」(吉田洋一会長)は、1月上旬、2日間にわたって冬季講座を開催し、道徳教育の目的や授業づくりについて話し合った。(札幌支局・湯朝 肇)

子供が深く考える場に/他の教科にはない力を養う

北海道師範塾「教師の道」が冬季講座

道徳の授業について講演する磯部一雄教諭

 「2019年度から中学校で科目としての道徳が完全実施されます。それでは、道徳の目的とは何だと思いますか」――こう切り出したのは札幌市立北野台中学校教諭の磯部一雄氏。今年1月5、6日の2日間にわたって開催された北海道師範塾「教師の道」の冬季講座で、講師として招かれた磯部氏は、道徳の授業の在り方について持論を展開した。テーマは、「『学習指導要領を考える』――道徳教育の目指す方向」。同氏は日本道徳教育学会会員で、文部科学省の新学習指導要領「道徳」のための指導資料作成協力委員などに就き、教育の現場で長年にわたって「道徳」の授業に携わってきた。この日は模擬授業さながらの講演を行った。その中で同氏は、道徳の目的については、「子供を元気にすること」と断言する。

 「学習指導要領の中に、『よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う』とありますが、言い換えれば、これは子供たちが元気になることであり、何事も前向きで考えていくことができる、元気になって自分の力で歩んでみたいと思えるようになること。そんな子供に育てる授業が道徳ではないでしょうか」と語る。

北海道師範塾「教師の道」が冬季講座

道徳の授業について討論するグループワーク

 冬季講座には北海道内の現役教師や教師OB、大学教授、さらに教師を目指す学生など65人が参加、熱心に耳を傾けた。磯部氏が用意した教材は、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が雑誌に載せた「誰かのために」というエッセー。がんを患い余命3カ月と宣告された40代前半の女性が高校2年生の娘のために、力を振り絞っておにぎりをむすんであげたという話である。ここで磯部氏は問い掛ける。「お母さんが娘におにぎりを作っている時、心の中で何かをつぶやいていた。それはどんなつぶやきか」。参加者はワークシートに答えを書いて講壇の白板に張り付ける。さらに、磯部氏は要求する。「『いいな』と思ったつぶやきと『どうして、そのつぶやきを書いたのか、聞いてみたい』と思ったものに印を付けてください」。そこから参加者同士の討論が始まる。

 磯部氏は語る。「道徳の授業では、教材の力は5割。教師は使用する際に教材の特質をつかみ、それに応じた授業を展開する必要がある。道徳の質問に正解はなく、特に注意しなければならないのは、評価する際には生徒の発言や記述ではない形で表れる、生徒の『姿』に着目してほしい」。道徳の授業の中で子供たちが、どう反応したのか。授業の終わりの感想文のみにとらわれることなく、生徒の表情を見てほしいというのである。

 今回のテーマについて、吉田洋一会長は、「中学校において来年度から道徳が教科として全面実施される。道徳の授業の捉え方、あるいは教え方を身に付けるのは教師にとって喫緊の課題」と語る。英語や数学と違って道徳は数値などによる評価はないものの、子供が他の意見や価値観を聞いて、「自分の考えや生き方」を深く考える場となる。その分、他の教科にはない力=道徳力を養う可能性は大きい。磯部氏の講演の後は、参加者が班をつくり、一つの教材をテーマに協議するグループワークを実施した。

 北海道師範塾「教師の道」は「常に研鑽(けんさん)を積む教師像」を目指し、平成22年9月に発足した。また、教師を目指す学生を支援するボランティア団体として定期講座を開設。その間、夏・冬季講座を開催している。これまで同塾で学び教員採用試験で合格したのは計88人。とりわけ来年度の北海道内の公立学校採用試験の合格率は2次検査で90%を誇る。「師範塾は単に教員採用試験のためのみに学ぶわけではなく、教師はいかにあるべきかを常に問いながら歩むことが重要だと考えている」と吉田会長は語るが、同師範塾は今や道内教育界では一目置かれる存在になっている。

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