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人工知能に美意識は芽生えるか?

沖縄科学技術大学院大学で初のAI芸術展

 人工知能美学芸術研究会(AI美芸研=中ザワヒデキ代表)と沖縄科学技術大学院大学(OIST=ピーター・グルース学長)は11月3日から来年1月8日までの日程で、「人工知能美学芸術展」を沖縄県恩納村のOIST構内で開催している。人工知能の芸術作品を一堂に集めた展覧会は全国で初めてで、芸術・文化、学術界から注目を集めている。(那覇支局・豊田 剛)

従来の人間美学・芸術の概念覆す

人工知能に美意識は芽生えるか?

機械的美学を表現した草刈ミカ氏による凹凸絵画(右上)と中ザワヒデキ氏による三五目三五路の盤上布石絵画=沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学構内

 「人工知能は芸術創造の分野にまで侵触するのか。人工知能に美意識が芽生え、自律的に芸術を創作する未来はあり得るのか」

 こうした疑問に取り組むAI美芸研が現代的な施設を誇るOISTを舞台に摩訶(まか)不思議な展示会を開催している。

 展示は、美学を人間と機械に分け、芸術も人間と機械に分けた上で、以下の四つに分類しているのが特徴。

 一つ目は、人間美学を人間が作り出す芸術。すなわち、通常の芸術の形態だ。

 二つ目は、機械美学を人間が芸術で表現するもの。主催者は、「機械的美学にのっとり人間が作る芸術は、20世紀のシステミック・アートや音列作曲、視覚詩等にその類型を辿(たど)ることができる」と説明している。

 三つ目は、人間美学を機械が芸術表現するもの。人間的美学にのっとって機械が作る芸術は、「人工知能が創作した芸術」とされるが、「そのほとんどは人間が自動制御プログラムを走らせて制作した代物にすぎない」という見方をしている。

 最後は、まだ実現していない領域で、機械美学を機械が芸術に表すというこれまでにない現在進行形の分野。中ザワ氏は、「機械が自らの美学で作る芸術はまだ実現していないが、われわれが見たいもの、われわれが目指すものであると位置付けている。これを希求するコンセプチュアルアート(概念芸術)や研究者による展示発表の場として観賞してほしい」と述べる。

人工知能に美意識は芽生えるか?

AIが解釈して描いたレンブラントの絵画の前に立つ中ザワヒデキ氏=沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学構内

 OISTの研究棟に向かうトンネルギャラリーには、16年に中ザワ氏が起草した「人工知能美学芸術宣言」が大きく書き出されている。「人間が人工知能を使って創る芸術のことではない。人工知能が自ら行う美学と芸術のことである」という言葉で始まり、「人工知能が有する認識能力、判断能力、創造能力の一部等は、常人の脳が有するそれらをすでに凌駕している。人間は人工知能を使って認識し、判断し、芸術作品の創作を行っている」と説明している。

 展示会で際立って目立つ作品は、AIが制作したレンブラントの絵画だ。人間がプログラミングした自動生成ソフトを使い、レンブラントの筆致や色使い、凹凸などを詳細にデータ化。AIの機械学習で、本物に忠実に再現された。

 また、人間が描いた落書きを自ら学習して、ブロックをキャンバスにして、人工知能自身が考える落書きを表現するロボットも展示されている。人間以外の知性の芸術活動にも注目し、チンパンジーとボノボが描いた絵画も見ることができる。参加作家は45組(うち6組はチンパンジーとボノボ)に上る。

 12日、AI美術をテーマにしたシンポジウムで中ザワ氏は、人工知能が作り出す芸術の可能性についてこう切り出した。

 「2016年3月、『囲碁は芸術』と語っていたトップ棋士が人工知能に敗退した。そんな彼は『自分は絶対負けない、なぜなら囲碁は芸術だからだ。自分は芸術として囲碁をやってきた。人工知能は芸術ができないから囲碁では僕に勝てない』と言った」

 人工知能が人間を圧倒した例だ。これに関連して、機械美学でデザインされたエッフェル塔を例に挙げ、機械美学によって人間側の美学が矯正されたと指摘。「人工知能が出した絵を、これを良いと思わなければいけないという世界が来ると思う」と指摘。芸術でも同じことが起こる可能性に期待を示した。

 「何を美しいと思うのか。そもそも美しいと思う心があるのか。人間にしかできないはずと考えられていることが本当にそうなのかを研究したい」。中ザワ氏は、AIの「自律的」な芸術活動が可能かどうかを解明したいと意欲を燃やす。

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