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【上昇気流】晩秋になると道端や空き地で目立つのは、イネ科の植物だ

メヒシバ

メヒシバ

 晩秋になると道端や空き地で目立ってくるのは、イネ科の植物だ。メヒシバ、スズメノカタビラ、エノコログサ、ススキなど、おびただしい種類がある。気流子にも名前の分からないものが多い。

 「いね科の植物も分かりにくくて閉口だが、かやつりぐさ科のものも実に紛らわしいのが多くて困る」と随筆家の串田孫一は『博物誌』に書いた。標本を作ろうとしたが、実行には至らなかったらしい。

 『人里の植物Ⅱ』(長田武正著、保育社)には32種類も載っている。散歩がてら探してみると3種類が見つかった。カヤツリグサ、ハマスゲ、アゼカヤツリ。インターネットで画像も見てみた。

 ハマスゲに興味深い記述があった。薬草として古くから知られ、正倉院の薬物中からも見つかり、スーダンで見つかった2000年前の人骨から、ハマスゲを食べていたことが分かったという。

 その抗菌作用が丈夫な歯を保っていたようだ。それを摘んで持って帰り、覚えるためにスケッチする。細い小穂(しょうすい)がしなやかで、美しさに見とれてしまう。唯一で完全なものの美しさだ。

 生物学者の今西錦司は、蝶(ちょう)や鳥に完成した美を認め、自然の秩序の中にも完全さを見ていた。それ故、変わらない自然であることが「私のようなものにも、自然に憧れをいだかせる、理由の一つともなっているのである」という(『私の自然観』)。そう思うと、人間は自然の前で、誇るべきものの何もない存在だと感じさせられる。

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