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外見を想像するほどの室生犀星の美しい日本語

室生犀星(Wikipediaより)

室生犀星(Wikipediaより)

 かつてベストセラーになった本に竹内一郎著『人は見た目が9割』(2005年、新潮新書)がある。言葉よりも見た目が重要という話だが、それほど外見が大切なのだろうかと思ったこともある。だが最初に会った時は、その人の中身、性格や嗜好(しこう)などはまったく分からないのだから、外見が印象を左右するというのも納得できる。

 名前も外見の一つと言っていいかもしれない。名前が古めかしければ高齢者を、現代風だと若者を想像するということがあり、実際に会って驚くことがある。

 作家や詩人などは言葉によって表現をするので外見は関係ないとも言えそうだが、案外、その言葉が相手のイメージを膨らませる場合がある。

 文学史で有名な例に、詩人の萩原朔太郎と室生犀星との初めての出会いがある。叙情的な美しい日本語で書かれた犀星の詩に、朔太郎は作者が美少年だと想像していたが、実際に会ってみてがっかりした。犀星は美少年にはほど遠い容貌(ようぼう)だったからだ。

 犀星には、故郷への複雑な心境を歌った「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」(「小景異情―その二」)という詩のフレーズがある。これは複雑な生い立ちをした犀星の心境がよく伝わる詩句である。

 東京五輪の最中だが、国際結婚をした家庭の選手が活躍しているのを見ると、故郷は地球規模になっていることを実感する。明治22(1889)年のきょうは犀星の生まれた日である。

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