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生命の闘いを象徴する五輪のパフォーマンス

開会式で披露されたアトラクション。日本の文化を感じさせる=23日、国立競技場

開会式で披露されたアトラクション。日本の文化を感じさせる=23日、国立競技場

 五輪開会式のパフォーマンスは短時間だったが、「多様性と調和」をテーマに、はっとするような新鮮で味のある演出となった。

 一つは、女優の真矢ミキさんが棟梁(とうりょう)、ダンサーや俳優が大工に扮(ふん)し、職人歌「木遣りの歌」が披露される中、トンカチやのこぎり、かんなの道具遣いを真似(まね)て脚色されたアクロバチックなダンス。各人の仕事台が縦横に動き、全体が次第に調和ある形に収斂(しゅうれん)していった。

 もう一つは、カラーボックスを組み合わせてつくった街並みを、さまざまな人種、年代の人々が行き交い踊る中、街は解体され再び新しい構造物に変化していく。最後はそのボックス一つ一つが市松模様の部分となっていくという凝った趣向。

 生物学者・福岡伸一さんの「生命の動的平衡は自律分散型である」(『動的平衡3』)という言葉を思い起こした。「(生命体は)絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である」(同書)と。

 宇宙は放っておけば次第に無秩序さを増すという「エントロピーの法則」が存在する。地球が生まれてから46億年経(た)つが、人間や生物は内部にたまるエントロピーを外部に捨て続け、生命の多様性と調和を維持してきた。

 生命の仕組みと展開を意図した演出ではなかろうが、新型コロナウイルス禍における五輪での生命の闘いを象徴するようなパフォーマンスに溜飲(りゅういん)が下がった。

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