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量子暗号通信が登場し、「力」が様変わりしている

 「力」というものは元来、自然哲学・社会哲学共通に用いられる概念であったと考えられ、かつて物質的力、生命力、政治権力などは一緒に論じられていた。

 それが17世紀の機械論的自然像の中核をなす近代力学の成立以降、力と言えば「力学」のものとなった(佐藤文隆著『科学者、あたりまえを疑う』青土社)。機械的な、目に見える単純な力と言えようか。

 ところが科学において今日、こうした力学的力が様変わりしている。次世代の暗号技術と言われる「量子暗号通信」もそうだ。この分野で一頭地を抜く東芝が、世界最長級の通信距離600㌔を実証したと発表した。

 量子暗号通信の目指すところは、通信速度や耐久力でなく盗聴防止。盗聴は理論上不可能とされる。従来の機械的な力の応用という考え方では決して生まれなかった、人間に近い認識力が必要と言われる技術だ。

 今後、金融や医療など高い機密性が求められる分野から普及が本格化するとみられ2026年度までの実用化を目指すとしているが、世界的に開発競争の激しい分野である。

 力の信奉者である中国は、こうした最新科学の特質を先刻承知のようで、強大な軍事力を誇示して周辺に脅威を振りまく一方、人工知能(AI)を使った監視技術などで秘(ひそ)かに人々の心の中にまで入り込もうとしている。硬軟織り交ぜた「力の支配」というべきで、われわれはそれを追及する“眼力”を持たなければならない。

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