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「五月蠅(うるさ)い」は古事記にも用例がある

 「うるさい」を漢字で書くと「五月蠅い」となる。「5月(陰暦)のハエはうっとうしい」というようなところからきているのだろう。『古事記』(712年成立)にも用例がある。原文では「狭蝿(さばえ)なす」だが、注釈では「5月のハエのようにいっぱいいる」となっている。

 アマテラスオオミカミとスサノオノミコトの対立の結果、姉神のアマテラスが「天の岩戸」に入ってしまった。太陽神であるアマテラスが姿を隠してしまったのだから、夜ばかりが続く。そこで神々が5月のハエのように大騒ぎしたという話だ。

 「騒がしい」で連想されるのが5月のハエだった。ハエは単にうっとうしいだけではなく、疫病や感染症の原因とも考えられていたのだろう。

 となれば、人の命にも関わってくる。現在はハエを見掛けることは少ないが、1960年代以前は周囲に普通にいた。古代の昔にはっきりした科学知識がなかったのは当然だが、経験的にハエが「好ましくない昆虫」と思われていた事情はあったはずだ。

 なお天の岩戸のエピソードは、後の鎮魂祭や大嘗祭につながる行事を反映したものとの有力な説がある。スサノオが出雲の勢力を表しているとの説もある。

 神話の中での姉神と弟神との対立は、地域の勢力同士の関係を映し出したものと考えることも可能だ。大和王権が、対立する出雲の勢力を軍事的にか政治的にかのみ込んでしまった歴史が今に伝えられている可能性は高い。

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