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水素が人類文明の救い手として注目されている

 亜鉛などの金属を塩酸で溶かすと気体が発生し、試験管の水の中をくぐらせると水と置き換わる。それが水素で、水上置換法と言うが、中学の授業で行うので覚えている人もいると思う。水素はそれほどポピュラーな元素だが、その恩恵を日頃実感している人はあまりいないのではないか。

 無色、無臭、原子番号1番。最もシンプルな構造を持ち他の分子と結びやすく、その化合物に自らの性質が溶け込んでしまうことが多いのも一因だ。人類が水素を知ったのは250年前。以来、多くの水素化合物が発見され、その新たな利用法も生み出されてきた。

 例えば化学肥料製造では、空気中から分離された窒素と炭化水素などから得られた水素によりアンモニア合成がなされる。アンモニア工業技術としてハーバー・ボッシュ法と呼ばれ、化学肥料の大量生産への道を開き、農業発展に尽くしてきた。

 現代医療では、MRIが水素の核磁気共鳴により、生体組織の側面図を得て重宝されているのは知る人ぞ知る。医療分野でなくてはならない存在になっている。

 今は「脱炭素」に向け、特段に水素利用が言われるようになったが、その下地はちゃんと作られてきたのだ。また化石エネルギーには限りがあるため、大量消費社会の限界を見極める時期到来は不可避だった。

 138億年前、宇宙創世の元となった物質元素が、今また人類文明の曲がり角でその救い手としてがぜん注目されるのは興味深い。

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