«
»

冬の街路樹の姿形から生命の秘密を感じる

 冬の穏やかな陽(ひ)に、落葉した街路樹のハナミズキやケヤキ並木のシルエットが美しい。ハナミズキの枝は横にぐんぐんと広がり、緩やかな曲線が空に向かって伸びているため、全体の樹形も整っている。

 その周期的に細やかに変化する枝ぶりは、春になると咲く花をより美しく見せるのではないか。そんな気がした。自分の姿形を魅力的に見せる術(すべ)を心得ている木だ。

 ケヤキは街路樹の定番の一つ。高木で、見上げると数え切れないほど細い枝が、天を突き刺すように伸びきらきら光っている。太い幹から何本かの主になる枝が分かれ、その先に細かい枝が密集しているが、左右の枝の生え方が相似形で安定性が保たれている。

 ハナミズキもそうだが、数学的な力を借りることで生存の省力化に努めているようだ。しかも、その形状は美しい。橋梁(きょうりょう)やタワーの設計者は植物の形態、構造に耐久力やしなやかさの原因を見いだし応用している。

 一方、この時期、剪定(せんてい)などの手入れがされていない街路樹の桜の木で、枝が無秩序にねじ曲がったり垂れたりしているのを見掛ける。幹の肌理(きり)の粗さも目立つ。作家の岡本綺堂は随筆集『江戸の思い出』で、そのゴツゴツした骨張った木ぶりばかりは好きになれなかったと書いている。

 今の季節、街路にひっそりとたたずむ植物たちだが、桜の木の場合、やがて咲く美しい花と冬の見た目の荒々しさとの組み合わせに、その生命の秘密があるような気もする。

1

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。