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生誕250年を迎えたベートーヴェンの人物像

 今年は音楽家ベートーヴェンの生誕250年を迎えた年で、故郷ドイツだけでなく、各地でコンサートやイベントが開催されている。生まれたのはボンで、1770年12月16日ごろ。

 正確な月日が分からないのは記録がないからで、レミギウス教会に12月17日の洗礼記録があるだけ。さて多くの天才たちの中で、彼は、私たち一人ひとりが異なった人物像を抱いている音楽家だと言われる。

 というのは、音楽がその人にしか分からない秘密を打ち明けるからだそうだ。いろいろなところで演奏を聴いてきたが、印象に強く残る体験があった。東京の靖国神社、遊就館で学徒兵の遺書が展示された部屋でのこと。

 バックミュージックに、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」が流れていた。この曲が使われた理由は、音楽を学んでいた学徒兵が家族と別れる日に弾いた曲だったからだ。

 もとはベートーヴェンが30歳の時に恋人に捧(ささ)げた曲だが、重く悲しく、静かなメロディーを聴いていると、あたかもこの学生がこれから戦地に赴いて体験する出来事を暗示しているようにも聞こえた。

 その後CDで繰り返し聴いていると、作曲は1801年のことだが、後に起こる二つの世界大戦を予示した音楽とも感じられ、恐るべき曲だと思った。気流子だけのベートーヴェン体験だ。だが、もっと衝撃的だったのは、彼が鉛中毒患者で、死後、頭蓋骨から通常の90倍の濃度の鉛が検出されたことだ。

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